【鎌倉バリスタ紹介】vol.7 「KAMAKURA COFFEE STAND」野口 量司さん ― 横須賀の名店が鎌倉に灯した理由 ―

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らてみゅーちゃん

異業種からバリスタに転身された野口さん。完成度の高いカップの背景には、野口さんの「経験」が息づいていたでし!美味しさの秘訣を探ってみたでし〜!

KAMAKURA COFFEE STANDとは?

横須賀の人気店「SPECIALTY COFFEE BEANS No.13」の2号店として、鎌倉・小町にオープンした「KAMAKURA COFFEE STAND」。観光客とローカルが交差するこのエリアに、なぜ新たなコーヒースタンドが生まれたのでしょうか。今回は代表の野口量司さんに、焙煎からレシピ設計、そしてバリスタとしてのキャリアまでじっくりお話を伺いました。

鎌倉という土地との「縁」

店内はとても居心地の良い空間です

野口さんが鎌倉に出店を決めたきっかけは、意外にも過去の経験にありました。

「元々、鎌倉の丸山珈琲で働いた事があって土地勘が少しあった事、縁を感じた事や狭い物件を見つけられたからです」と野口さん。

ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、2020年10月頃まで若宮大路沿いに「丸山珈琲 鎌倉店」がありました。かつて働いた鎌倉への土地勘、そして縁。プロモーション的な出店戦略というよりも、自然な流れの中で鎌倉という場所にたどり着いたことが伝わってきます。そして見つかったのが、小町という「観光客とローカルが交差する立地」にある物件でした。

目印はこの看板です

原子力の分析職から、バリスタの道へ

野口さんのキャリアは、コーヒー業界としては異色です。丸山珈琲に入る前の約9年間、原子力関連企業で燃料材の科学分析の仕事をしていたといいます。

「毎日分析分析ってやってんですけど、別に分析興味なく、たまたま配属されちゃったんで…なんかいい仕事ないかな、ちゃんと熱意持ってやれる仕事ないかなって」

そんな中で出会ったのがコーヒーでした。未経験からバリスタを目指し、いくつも応募しては断られる中、憧れていた丸山珈琲のアルバイト募集にたどり着き、採用されます。丸山珈琲では鎌倉・若宮大路店で3年間勤務し、独立に至りました。

興味深いのは、前職の経験が今の焙煎・抽出の姿勢に生きているという点です。

「検証がやっぱり厳しいんで、データ数すごいんですよ。2個3個の検証でオッケーじゃなくて、50サンプルとか100サンプルぐらい検証してその平均値を出す…1回2回のまぐれだったら美味しく誰でも入れられるんで、平均的に出てくるってのはやっぱり難しい。そこは前職が生きてるかもしれないですね」

再現性への執着は、偶然ではなく前職由来のものだったようです。

直火焙煎という個性 ― 「焦がさない」ための逆算

KAMAKURA COFFEE STAND(SPECIALTY COFFEE BEANS No.13)が使用しているのは、フジローヤルの1986年製・直火(ちょっか)式焙煎機です。

「スペシャルティコーヒーではあまり使われない直火の焙煎機を使用しています」

直火式焙煎機はスペシャルティコーヒーの世界ではあまり主流ではないものの、野口さんはこの焙煎機を使いこなし、火の入りが甘い「アンダー」や、逆に火が入りすぎる「オーバー」を作らないよう、粘性や甘さを意識した焙煎を追求しています。

「直火なんで、豆に直に火が当たってて、高さもそのまま。それがやっぱり焦げる原因になりやすいので、焦げないために初期にガンガン火力かけて、最終的に徐々に火力を落としていく。最後はもうほぼ余熱で仕上げるみたいな感じで調整してますね」

直火式焙煎機は蓄熱層を持つ焙煎機と異なり、豆の水分が抜けた後に火を入れると即座に焦げてしまうといいます。そのため、蓄熱に頼らず「1ハゼの時点でほぼ完成させておく」設計になっているのが特徴です。

「1ハゼの段階でパチパチ鳴った時に出しても、そこそこカップは出てると思うんですよね。ディベロップメント自体はそんなに発達してないですよ」

ROR(Rate of Rise)についても、独自の考え方を持っています。

「ROR、正直あんまり気にしてないです。結局カップで飲んでアンダーなのかオーバーなのか判断して、そこで最終的に微調整する。RORが低かろうが高かろうが、ネガティブ(欠陥臭や不快な味わい)が出てなければいいって思ってるんで」

数値よりもカップの結果を優先する、実践主義的なアプローチです。一方で、暖機運転や冷却の時間はすべて固定してルーティン化しているといい、「変にいじらないようにしている」ことが安定を生む土台になっています。

「それがおかしくなったら何か原因があるんですよ、多分。なんで毎回カッピングして、やっぱそんなにずれないなみたいな感じで」

「悪いカップ」から教えるトレーニング

きめの細かいミルクスチーム

スタッフ育成の方法も印象的でした。丸山珈琲時代に教わった手法をベースにしているといいます。

「意図的に悪いカップを作るんです。かなり未抽出なカップだったり、かなり成分が出すぎてるカップをわざと作って飲んでもらって、実際にそれがどう感じるかわかった上でいいカップを飲んで、違いをわかってもらう」

未抽出のカップは舌の先がドライに感じ、過抽出のカップは喉の奥がイガイガする――そうした感覚の違いを体験させたうえで、適正な抽出は舌の真ん中あたりに粘性や甘さを感じる、という基準を共有しているそうです。この「舌のどこで感じるか」という考え方は、丸山珈琲を通じて世界的な競技シーンの基準ともつながっているといいます。

そして、バリスタに完璧は求めていないとも語ります。

100点を毎回出すのは難しいため、日によって味がぶれないことを何より大切にしているそうです。目安として掲げているのは80点。「それだけ出せていれば、お客様は満足してくれると思うので」と野口さんは話します。実際には90点近いクオリティを維持できているようですが、それでも完璧を求めすぎないのは、安定こそが信頼につながると知っているからでしょう。

エスプレッソは専用ブレンドで

カプチーノ ¥900

メニューには看板商品である「鎌倉ブレンド」がありますが、提供はドリップ抽出のみ。エスプレッソには中深煎りの専用ブレンド豆が使われています。

「鎌倉ブレンドはエチオピア70%・ブラジル30%。エスプレッソはエチオピア50%・ブラジル50%で配合比率を変えています」

分けている理由は、ミルクとのバランスにあります。

アイスラテ ¥900

「エチオピアが70%になると濃度が薄いんですよ、それを改善するために比率を何パターンか検証して、半々ぐらいだとボディがいいなと思って50%にしました」

エスプレッソはドーシング量20g、40〜45mlアウトという抽出設定も、このボディ感を軸に組み立てられています。

エスプレッソメニュー以外にドリップ(プアオーバー)のメニューも豊富です(2026年9月時点)

エスプレッソマシンは横須賀本店と同じSIMONELLI。グラインダーはMAHLKONIGのpeak・EKを使用しています。

鎌倉という街の”客層”を読んだ味づくり

発酵系の豆も多く展開されています

なぜ鎌倉店は深めの味わいに寄せているのか。背景には、丸山珈琲時代の経験と、鎌倉・小町という地域特性への理解がありました。

「鎌倉って年齢層高い人もいるから、ブラジルのコクがやっぱりないと満足しないっていう人も結構いますからね」

丸山珈琲 鎌倉店で3年間働いた経験から、鎌倉の客層の好みを肌で知っていたことも大きいといいます。

日替わりのシングルオリジンラテについては、横須賀本店から続くスタイルとのことで、お客様を飽きさせない工夫がなされています。

牛乳も5種類を検証。安さでは選ばない

ミルクは千葉県産の牛乳を使用。これも複数の候補から検証を重ねて選定したとのことです。

「千葉の美味しい牛乳、阿蘇の牛乳とか、5種類ぐらい検証して、一番いいなと思ったんでこれにした。安い牛乳だと使わないです。いくらエスプレッソが濃くてもミルクに濃度感がないと薄くなっちゃうので、牛乳はやっぱり気にしてます」

提供スピードと接客も重視

ドーナツはミサキドーナツから仕入れているとのこと。ドーナツとのペアリングが抜群!

コーヒースタンドとして、味と同じくらい重視しているのが提供スピードと接客です。

「美味しくても提供スピードが遅かったら再来店はないと思っています。早くて美味しいコーヒーがあったら、また行こうかなってなると思います」

ただし、速さだけを追い求めているわけではありません。待ち時間を苦にさせない接客も心がけているといいます。この姿勢は、丸山珈琲時代に厳しく指導されたことが土台になっているようです。

「(できる限り)お客さん目線で応える。それができると普通の店とは違うようになるって、(丸山珈琲代表取締役社長の丸山健太郎氏)常に言われてましたね」

味だけでなく、接客までを含めて「美味しさ」を作る。コーヒーショップとしての哲学が垣間見える言葉です。

今後の展開について

ランプがとってもかわいいです

新たにカッピングイベントの構想も語られました。

「お客さんも何かないと飽きてきちゃうので…一般のお客さんに向けたフリーカッピングみたいなものは、ぜひ考えたいです」

鎌倉周辺では、すでに近隣ロースターが定期的にカッピング会を開催しており、ローカルにも定着しています。

こだわりの背景やバックボーンを直接伝えられる場として、カッピングイベントは新たなタッチポイントになりそうです。開催が待ち遠しいですね!

編集後記

小町という観光客とローカルが交差する立地の中で、直火焙煎という個性と、丸山珈琲仕込みのスピード・接客という現場力を両立させるKAMAKURACOFFEESTAND。異業種からの転身という異色のキャリアと、そこで培われた「検証を惜しまない」姿勢が、1杯のカップに静かに息づいています。

ぜひ小町に訪れた際は、足を運んでみてください!

(latte map編集部)

KAMAKURA COFFEE STAND

住所
神奈川県鎌倉市小町2-9-5

営業時間
11:00 – 17:00
※2026年9月16日から閉店時間が17:45に変更になります。
※営業日時の詳細は公式instagramにてご確認ください。

Wifi:なし

公式instagram
https://www.instagram.com/kamakuracoffeestand/