

クリエイティブ業界からコーヒー業界に転身された狩野さん!独自の視点でカフェラテの美味しさを探求されてるでし♪
隣(tonari)とは?

隣(tonari)《以下、隣》は、2024年12月に稲村ヶ崎にオープン。稲村ヶ崎の海から程近く、鎌倉の原風景を残した商店街の一角にあるコーヒーショップです。温かみのある和の空間にジャジーなBGMが流れ、上質なコーヒー体験を味わうことができます。今回は、隣のバリスタ・狩野 雄さんを取材いたしました!
狩野さんはどのような経緯でコーヒーの世界へ入ったのですか?

スペシャルティコーヒー好きが高じてお店を開くに至りました。
スペシャルティコーヒーやそれを取り巻く文化や人々の繋がりに魅了されて10年以上経ちますが、元をたどるとNYに旅行に訪れた際に当時ビルの地下に出店していたBlue Bottle Coffeeでの体験が原点かもしれません。
当時まだ日本でサードウェーブなんて言葉も生まれていたかどうかの頃ですが、たまたま訪れたそのお店で飲んだコーヒーやペーストリーの美味しさは当然ながら、お店の人や来店していた現地の人々から垣根なく多く語りかけられ、自分の知るカフェやコーヒーショップのイメージが良くも崩されたことが今もよく覚えています。
そこからコーヒーそのものの味わいの奥深さ、日本で発展していくコーヒーカルチャーなど日々追いかけていく中で、自分も生活の延長としてその一端を担うという熱が高まりお店を開くに至りました。

鎌倉に開業したキッカケを教えてください。

元は東京のオフィスでデスクワーカーとしてプランナー職をやっていましたが、コロナ禍のリモートスタイルに乗じて湘南方面へ事前を求めて引っ越してきました。
そこから湘南の風土や人々の暮らしや生活感に刺激を受け、これからの人生を長く考えた時に、自分の好きや良しとすることが仕事に直結していて、自分自身が当事者としてより打ち込める仕事をしたいと思っていたので、自然とコーヒーショップという形態にいきつきました。
場所は焦らずも日々色々と探していた中で、商業化が進みすぎていない、ただ周辺の方々の暮らしがしっかりと存在していて、コーヒーショップという一片がはまることでその街の営みの息遣いとしてより良くなる、自分の手の届く範囲でやっていけるお店を探していた時に、今の店舗の募集を見かけ、勢いで応募して今に至ります。
茅ヶ崎から葉山くらいまで広く見ていたのでたまたまという感じではあり、あまり土地勘はなかったのですが、稲村というなんとも言えない絶妙な場所に出会えたことも何か運命かなと思います。

隣のコンセプトは何ですか?

隣(tonari)という名前の由来は「向こう三軒両隣」という日本語のご近所づきあいに関するような言葉から来ています。
お店の物件を見た時に、欧米色の強いお店をつくるのも違うような気がして、ましてや鎌倉という土地において、且つ日本人の自分がやるならという考え、そしてお店の立地柄ということもあり、ご近所店舗として垣根なく、コーヒーを楽しむにも、読書するにも、特に目的なく休憩でも、どんな目的においても気軽に入ってもらえるような場所でありたいと思っています。
とはいえ、一丁目一番地のメニューとしてはデイリーなスペシャルティコーヒーが美味しいお店でありたいという気持ちでもおります。
提供されているカフェラテへのこだわりを教えてください。

フィルターで使う豆の印象がそのまま出せたらという思っています。コーヒーの美味しさにやはりコーヒー自身が持っている果実や花のような香りが一番にあると思っているので、それがエスプレッソにおいても伝わればと考えています。
フィルターに使っている焙煎の具合からエスプレッソの味わいの濃度が出づらいこともあり、スチームミルクの甘さにも負けない香り、存在感を出すという意味で粉量はダブルショット気味にしています。
また、器もお店のつくりに合わせて湯呑みのようなトールカップを使っていることもあり、アートはシンプルに行ってます。(リスペクトするコーヒーショップのオーナーと共感することもあり、アートもそのうちやめようかとも思ってますが笑)


焙煎機やエスプレッソマシン、グラインダーなどの機器について、隣のこだわりを教えてください。

焙煎機:aillio
エスプレッソマシン:la marzocco linea mini
グラインダー(フィルター):MAHLKONIG EK43
グラインダー(エスプレッソ):MAHLKONIG X54
日常のコーヒーを特別な一杯にしたい。という思いでデイリーに飲めるスペシャルティコーヒーを提供しています。
お店のシグネチャーとしては3〜5種類のフィルターコーヒーを選べるように品揃えしており、いずれも果実としてのコーヒーの印象がより良く伝わる焙煎を心がけています。
私自身がデスクワーカー自体の仕事の合間や休日にコーヒーを常に飲む習慣があったのですが、温かいうちにも冷めたときにも美味しく、最後の一滴まで美味しく飲みきれる。それでいて、また次の一杯を飲みたいと思えるコーヒーに魅力を感じていたこともあり、そのような一杯につながる焙煎、抽出を心がけています。
エスプレッソはブラックを飲めない友人にも飲んでもらえるようにという思いで提供を決めました。元はフィルターのみでやろうかと思ってましたが笑
エスプレッソにもドリップと同じコーヒー豆を使用しています。所謂オムニスタイルですが、あまりそこもオムニで提供するからという考え方で焙煎している訳ではなく、フィルター向けのベストを求めた焙煎をした豆をエスプレッソにも使う上で、エスプレッソ・ラテも美味しく落とすことを考えてエスプレッソ側でグラインドなど抽出のための調整を行っています。なので基本はSOE(シングル・オリジン・エスプレッソ)の提供になります。
狩野さんと隣の展望について教えてください。
稲村ヶ崎という場所、鎌倉という土地自体が盛り上がる。特にコーヒー文化というものがここにもしっかりと根づいている。ということに私達の活動が繋がっていければと思っています。コーヒーショップにはその場の営みを活気づかせる役割もあると思っているので、それが何よりです。
お店としてはより多くの人にコーヒーを届けられるように、稲村の店頭だけでなく、オンラインショップや卸、イベントなどを通じてより広く隣のコーヒーを提供していきたいですし、それを通じて私達もより多くの様々なコーヒーに出会いたいとも思っています。
今年出店した中国のイベントは刺激的でとても楽しかったので、そういった機会に乗じて旅の一環的な出展もしたいですね笑

編集後記
取材を通して、狩野さんは始終「豆の果実感と華やかさを表現したい」と口にされていました。それをシンプルかつダイレクトに表現する方法としては、フィルターコーヒーがベストなのかも知れません。
たしかにカフェラテなどのミルクビバレッジは、フィルターコーヒーと比べて抽出工程における変数が多いため、バリスタの技量に影響されやすく、クオリティの維持・平準化が難しいメニューです。さらにスチームミルクによって豆の香りを損ねてしまうため、豆のポテンシャルを引き出しづらい部分もあります。そのような背景から、カフェラテを提供されないスペシャルティコーヒー専門店も少なくありません。
しかし、そういったデメリットがありながらも、なぜ狩野さんはカフェラテを提供し続けるのか?それは、カフェラテを「料理」として捉えているからではないでしょうか。
「自分が思うカフェラテの美味しさを伝えたい」
狩野さんの一杯からそんなメッセージを読み取ることができます。そんな狩野さんのスタイルは、他業種からの参入、とりわけクリエイティブな分野で活動されていたが故に確立された唯一無二の武器に他ならないと感じています。
バリスタのみならずどの業界・職種でも共通して言えることですが、「キャリア形成」は重要な指標です。どのお店でどのような経験・スキルを身に付けてきたかが評価しやすいからです。しかし一方では、スキルの専門化によって視野が狭まり、属人化するリスクもあります。狩野さんは柔道戦略のようにご自身の強みと弱みを整理した上で、端的かつ明瞭に美味しさを表現しているのが、魅力の一つなのかも知れません。
隣(tonari)
住所
神奈川県鎌倉市稲村ガ崎3-1-18
営業時間
火水金土:11:00~18:00
日:13:00〜18:00
定休日:不定休(公式instagramをご確認ください。)
Wifi:なし