【SCAJ2026 レポート③】JBC決勝!猿田彦珈琲・伊藤 大貴選手らのプレゼンテーションを独自解説!

優勝した伊藤 大貴選手(猿田彦珈琲)
<span class="fz-12px">らてみゅーちゃん</span>
らてみゅーちゃん

クリエイティビティ溢れるプレゼンテーションにとても感動したでし!皆さんの発信がコーヒー業界全体に波及して、コーヒーがもっと美味しくなっていくことを期待してるでし!

SCAJ 2026で開催されたジャパンバリスタチャンピオンシップ(JBC)2026の決勝が、10月15日にステージAで行われました。決勝に進んだ6名が、エスプレッソ、ミルクビバレッジ、シグネチャービバレッジの3種を15分間で提供するプレゼンテーションで競いました。

この記事では、各競技者のプレゼンテーションを競技順に独自解説してまいります。SCAJ公式YouTubeで配信された「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ(JBC)2026 決勝」の映像をもとに、latte mapが各競技者のプレゼンテーションを要約・解説したものです。農園名・生産者名・数値(抽出レシピ、配合など)の一部に、聞き取りや解釈の誤りが含まれている可能性があります。正確な情報は、公式の配信映像および各競技者・各社の発表をご確認ください。誤りにお気づきの際は、お手数ですがご連絡いただけましたら訂正いたします。

※latte mapは、SCAJ実行委員会の承諾を得て、特別にJBCステージ内で撮影を行なっております。

SCAJ2026 レポート①・②は以下よりご覧ください。

Contents

JBC2026 準決勝・決勝のスコア

JBC2026は、準決勝14名の中から上位6名が決勝に進出しました。準決勝では、京都・Unirの南條裕乃選手が703点でトップ通過し、伊藤大貴選手、安部潤選手、石谷貴之選手が続きました。

決勝では、伊藤選手が718点で優勝し、石谷選手が714点で2位と、わずか4点差の接戦になりました。3位には安部選手、5位には野澤選手が入り、決勝6名のうち3名を占めた猿田彦珈琲が表彰台に2名を送りました。両ラウンドのスコアを以下にまとめます。

JBC2026 決勝

順位氏名(敬称略)会社名店舗名所在地スコア
優勝伊藤 大貴(Hiroki Ito)猿田彦珈琲株式会社東京都718
2位石谷 貴之(Takayuki Ishitani)TAKA ISHITANI東京都714
3位安部 潤(Jun Abe)猿田彦珈琲株式会社東京都686.5
4位南條 裕乃(Hirono Nanjo)株式会社ヒサシヤマモトコーヒーUnir(ウニール)京都店京都府649
5位野澤 隆成(Ryusei Nozawa)猿田彦珈琲株式会社東京都627.5
6位衛藤 匠吾(Shogo Eto)direct coffee kyoto京都府625.5

JBC2026 準決勝

順位氏名(敬称略)会社名店舗名所在地スコア
1位南條 裕乃(Hirono Nanjo)株式会社ヒサシヤマモトコーヒーUnir(ウニール)京都店京都府703
2位伊藤 大貴(Hiroki Ito)猿田彦珈琲株式会社東京都690
3位安部 潤(Jun Abe)猿田彦珈琲株式会社東京都659.5
4位石谷 貴之(Takayuki Ishitani)TAKA ISHITANI東京都659
5位衛藤 匠吾(Shogo Eto)direct coffee kyoto京都府638.5
6位野澤 隆成(Ryusei Nozawa)猿田彦珈琲株式会社東京都634
7位箭内 彩香(Ayaka Yanai)株式会社サザコーヒーサザコーヒー本店茨城県608.5
8位長坂 奈南(Nanami Nagasaka)レックコレクティブ株式会社REC COFFEE福岡県604
9位谷口 武尊(Takeru Taniguchi)株式会社小川珈琲クリエイツOGAWA COFFEE LABORATORY 下北沢東京都588.5
10位西脇 章太郎(Shotaro Nishiwaki)東京都585
11位安 優希(Yuki Yasu)株式会社サザコーヒーロースターサザコーヒー筑波大学アリアンサ店茨城県582
12位白井 伸之(Nobuyuki Shiroi)株式会社BrewPeace珈空暈東京都574
13位井上 エルモ(Elmo Inoue)レックコレクティブ株式会社REC COFFEE福岡県552
14位小野 魁途(Kaito Ono)株式会社GLITCHGLITCH COFFEE&ROASTERS東京都511.5

決勝進出者:準決勝→決勝の変動

氏名(敬称略)準決勝(順位/スコア)決勝(順位/スコア)スコア差
伊藤 大貴2位/690優勝/718+28
石谷 貴之4位/6592位/714+55
安部 潤3位/659.53位/686.5+27
南條 裕乃1位/7034位/649−54
野澤 隆成6位/6345位/627.5−6.5
衛藤 匠吾5位/638.56位/625.5−13

出典:SCAJ公式サイトのJBC2026競技結果ページ

伊藤 大貴選手(猿田彦珈琲)

テーマ:次世代に示すバリスタ像

伊藤選手は、このステージに立つバリスタのプレゼンテーションに心を奪われてこの業界に入り、「自分もここで最高の1杯を目指そう」と挑戦を続けてきました。

その意味を考え直す出来事が、昨年のWBCでありました。お店でコーヒーを提供していた時、1人の高校生が往復6時間以上かけて、伊藤選手の1杯を飲みに来てくれたのです。彼は伊藤選手のプレゼンテーションを見て、「いつかバリスタになることが夢になった」と話しました。伊藤選手は嬉しかった一方で、背筋が伸びる思いもしたそうです。このステージで何を伝え、どんな仕事を見せるかが、次の世代にまで影響すると実感したからです。

情報へのアクセスもコーヒー作りの可能性も広がった今、どんなバリスタの姿を示すべきか。伊藤選手の答えは、便利なツールが増えるほど、バリスタ自身が味わいを確かめて試行錯誤することが重要になる、というものです。成功した時も、うまくいかなかった時も、そこから学んで次の1杯に生かす。そこに、この仕事に夢中になれる面白さがあると言います。そして、その姿を示し、「次の世代も目指したいと思える職業にすること」を、自身の使命としました。

構成は、自身の在り方に影響を与えた3人の生産者のコーヒーを使い、エスプレッソ、ミルクビバレッジ、シグネチャーの順で提供するものです。先にミルク用のエスプレッソを抽出しながら、ミルクで使う2人の生産者の話をし、その後にエスプレッソの生産者を紹介する進行でした。

エスプレッソ:レイチェル・ピーターソン氏(パナマ/ハシエンダ・ラ・エスメラルダ)

コーヒーと生産者

使用したのは、ハシエンダ・ラ・エスメラルダのゲイシャで、プロセスはウォッシュドです。自然を相手にするコーヒー生産では、毎年同じ条件が揃うわけではありません。レイチェル氏は、どんなに最新の設備を導入しても、必ずクオリティコントロールを通して、その年のコーヒーに合う最終的なプロファイルを調整することを大切にしています。今年は、最も甘いチェリーを実らせた6歳の若い木からのみ収穫したロットにしました。弾けるように明るくジューシーなシトラスの酸を引き出しています。長年素晴らしいコーヒーを作ってきたレイチェル氏が、今も毎年当たり前のように試行錯誤している姿を見て、伊藤選手も自分の抽出を見直すことを決めたそうです。キャリアを重ねても試行錯誤し続ける姿勢こそ、このステージで示すべき姿だと語りました。

抽出レシピ

21g→50gです。グラインダーは、ネイキッドグラインダーです。回転数が960rpmと低く、ゆっくり挽けてスムースなテクスチャーを引き出せるため選びました。グラインドは2回に分けます。事前にRDT(微細なミスト)を使い、挽いた直後の粉にはイオン発生装置を使います。この3つの組み合わせで、微粉の発生と静電気によるダマを抑え、明るいシトラスの酸をより引き出します。

フレーバーと提供

フレーバーはオレンジブロッサム、マンダリンオレンジ、アプリコット、アフターにアールグレイティーです。ミディアムローウェイトで、シルキーなテクスチャーです。まずクレマを確認してもらい、飲むときはフローラルな香りを開かせるため、カップを10回スワリングしてから飲んでもらいました。

ミルクビバレッジ:タミル氏(エチオピア)×ネストル氏(コロンビア)のブレンド

1人目:タミル・タデッセ氏(エチオピア/アロコーヒー)

伊藤選手が初めてこのステージに立った時から、彼のコーヒーを使い、関係を築いてきた生産者です。今年のロットは、エチオピア在来種の74158で、プロセスはアナエロビック・ハニーです。タミル氏は今年、中米の発酵方法を学び、新たにバイオリアクターを導入しました。ただし、学んだ方法を真似るのではなく、エチオピアコーヒーのアイデンティティを守り、自分の国でしか作れないフレーバーを大切にしています。

今回のロットは標高2,570mで、豆の密度が高く、発酵条件が通常とまったく異なりました。そこで、販売できる量を減らしてもさまざまな発酵時間を試し、発酵240時間が「エチオピアらしい甘いベリー」を引き出すポイントだと見つけました。伊藤選手が学んだのは、最新設備を導入するだけでなく、自分にしか作れないものを考えて試行錯誤することの大切さです。

2人目:ネストル氏(コロンビア/フィンカ・エル・ディビソ)

使用したのは、スーダン・ルメのナチュラルで、バイオリアクターで150時間発酵させたロットです。明るくジューシーなベリーの酸を引き出しています。

ネストル氏が今のプロセスにたどり着いたきっかけは、一度うまくいった工程を記録しておらず、同じ味を再現できなかった経験でした。運に任せて高品質を作るだけでは、家族の生活を守るには不安定でした。そこで、工程を徹底して記録し、多くのチェリーをロスにしかねない状況も乗り越えて、彼らにしかできない高い再現性を実現しました。伊藤選手が学んだのは、うまくいかなかったことからも学び、成功するまで試行錯誤することの大切さです。

抽出レシピ

コロンビア16g、エチオピア5gのブレンドで、32gを抽出します。コロンビアは回転数の高いグラインダー(レブゼロ)で、より明るい酸を引き出します。エチオピアはネイキッドグラインダーで、より滑らかなテクスチャーを引き出します。

提供前の工夫

エスプレッソを事前に抽出し、ボトルに蓋をして香気成分を閉じ込め、約5分半クールダウンします。カップに移して液体を混ぜます。この方法が、ブレンドから生まれるストロベリーのフレーバーを最も開かせたそうです。

シグネチャービバレッジ

コンセプト

主役は、レイチェル氏のエスメラルダ(ゲイシャ、ウォッシュド)のエスプレッソ4ショットです。多くの失敗と成功から試行錯誤してきた努力が詰まっています。弾けるようなスパークリングな酸を生かして、「エスプレッソ・シャンパン」として提供します。ドライアイス70gを加えて液体を5℃に冷やしながら、二酸化炭素で微発泡のフィジーなマウスフィールを作ります。仕上げに、ネストル氏とタミル氏からの学びを生かした2つの副材料を加えます。

副材料1:パロサントのミルクウォッシュ(30g)【ネストル氏の学び】

ネストル氏が今のプロセスにたどり着くまで多くのチェリーをロスにしていたことから、伊藤選手自身も、練習で出たミルクビバレッジのロスを見直して使うことを選びました。練習時間に作ったミルクビバレッジに、パロサントの蒸留水を1:2で加え、レモン果汁10%を加えて、ペーパーでろ過します。

パロサントも、形が不揃いで廃棄される予定だったものです。ストロベリーのフレーバーに、パロサントとゲイシャの柑橘の香りが加わり、ブラッドオレンジのフレーバーが生まれます。

副材料2:ミルクパイン・シュラブ(80g)【タミル氏の学び】

タミル氏の「エチオピアらしさを大切にする姿勢」に倣い、日本の食材を使いました。ビネガーの複雑な酸で厚みを作る、パイナップルシュラブです。廃棄する予定だったミルクパインの葉と皮に、水を1:1で加えます。きび砂糖とシークヮーサーのフルーツビネガーを10%ずつ加え、常温で2日間漬けて発酵させました。ミルクパインは沖縄原産の品種です。葉の部分にもリナロールという香気成分を含んでおり、ゲイシャの華やかさを引き出すために選んだそうです。それによりパッションフルーツとピーチのフレーバーが生まれます。

仕上げと提供

ストレーナーで濾してドライアイスを取り除きます。フレーバーはパッションフルーツ、ブラッドオレンジ、ピーチです。微発泡でフィジーなマウスフィール。

まとめ

3人の生産者の「試行錯誤」を、3杯のドリンクでつなぎました。

  • エスプレッソでは、レイチェル氏の品質管理への姿勢。
  • ミルクでは、タミル氏の自国のアイデンティティと、ネストル氏の再現性。
  • シグネチャーでは、その学びを廃棄素材の活用につなげました(ミルクのロス、パロサント、ミルクパインの葉と皮)。

締めでは「バリスタという仕事への誇り」を語り、高校生の彼のように、誰かがバリスタを目指すきっかけを作ることを使命として示しました。ステージも工夫しました。少し高いカウンター形状にし、シグネチャーでは別のテーブルに移動してもらう構成です。抽出機材に目がいきがちな近年のスタイルではなく、ジャッジとコネクトして、メッセージがダイレクトに届くようにしたかったそうです。

安部 潤選手(猿田彦珈琲)

参考:SCAJ公式YouTube

テーマ:理想へ向かう3つの原動力

「誰かに美味しいコーヒーを届けたい」という理想を追うほど、人は困難に向き合うことになります。安部選手も、結果が出なかったことや、思い描いた味を作れなかったことが何度もあったそうです。それでも追い求めたい理想の味があり、それを支えた3つの原動力を、3つのドリンクに対応させました。

  1. 好きであること(エスプレッソ):理想のタクタイルと甘さ
  2. 人とつながること(ミルクビバレッジ):理想のバランス
  3. 届けたいという思い(シグネチャー):コーヒーを最大限に活かしたシナジー

エスプレッソ:パナマ フィンカ・デボラ(ゲイシャ)/ロット「エリプス」

コーヒーと生産者

使用したのは、パナマのフィンカ・デボラのゲイシャ、ハイブリットプロセス、ロット名「エリプス」です。安部選手はこの農園のコーヒーが大好きで、ずっとこの大会で使いたいと思っていました。今年のカッピングで素晴らしい甘さとタクタイルを感じ、「理想を超えるエスプレッソを作れる」と確信したそうです。

生産者のジャミソン氏もエスプレッソが大好きで、「エスプレッソのためのコーヒーを作ること」を理想の1つとしています。質感と甘さの両方を高めるため、毎年プロセスを進化させているそうです。

プロセスは次のとおりです。

  • 完熟チェリーを密閉タンクに入れ、窒素を充填。
  • 約50時間、温度とpHを管理して、不要な酸化や発酵を抑える。苦味やざらつきを抑え、明るい果実感を引き出す狙い。
  • 最後にウォッシュドで仕上げ、ゲイシャのフローラルなノートを最大限に引き出す。

焙煎と抽出

焙煎:焙煎機を熱風式から半熱風式に変更し、蓄熱しながらディベロップメントを長く取って、甘さを明確に引き出しました。

抽出:ブリューレシオは1:2.3で、シルキーでコーティングされたようなテクスチャーを狙います。

抽出後:「ウェーブ」という機器で超低周波の電磁波を当て、エスプレッソ内のポリフェノールを結合させて質感を高めます。さらに約1分10秒クールダウンして、甘さをより明確にしました。

抽出後のエスプレッソの状態まで徹底して向き合うことで、ようやく理想のタクタイルと甘さにたどり着いたそうです。

フレーバーと提供

クレマを先に確認。フレーバーはピーチ、マンダリンオレンジ、オレンジブロッサム、ベルガモット。ミディアムローウェイトで、シルキーでコーティングされたテクスチャーです。白ワインのようなミネラル感とロングフィニッシュです。飲む際は、スプーンで5回混ぜてもらいました。

ミルクビバレッジ:エリプス×コロンビア ラス・フローレス

生産者のつながり

ミルクの甘さやクリーミーさが主流になる中で、コーヒーの酸と甘さが負けてしまう経験を何度もしてきた安部選手は、エリプスの繊細な酸と甘さをミルクでも表現するため、同じ理想を持つもう1人の生産者とつながりました。コロンビアの生産者、ラス・フローレスのジョアン氏。ジャミソン氏と同じ「抽出された時の美味しさ」を理想としています。

コーヒーはラス・フローレスのチロソ種で、ラクティック・サーマルショック・ナチュラルです。プロセスは、完熟チェリーをサーマルショックの嫌気性発酵にかけ、さらに乳酸菌を活用した2次発酵を行うものです。ストーンフルーツのような甘さと、発酵を抑えた綺麗なフレーバーが生まれます。

抽出レシピ

エリプスとチロソを2:1でブレンドし、エリプスのストーンフルーツやシュガー系の甘さをハイライトします。ブリューレシオは1:1.6。

ミルク

低温殺菌牛乳と低脂肪のジャージーミルクを2:1でブレンドし、70%に濃縮して使います。低温殺菌牛乳はリッチな甘さで、キャラメルソフトクリームのフレーバーを担います。低脂肪のジャージーミルクはクリーンなテクスチャーと綺麗な甘さで、イエローチェリーのフレーバーを引き出します。

フレーバーと提供

イエローチェリー、キャラメルソフトクリーム。クリーミーでコーティングされたテクスチャーで、提供後すぐに飲んでもらいます。

シグネチャービバレッジ

コンセプト

安部選手は、副材料を加えて新しいフレーバーを作ることが、コーヒー本来の味から遠ざかるのではないかと、シナジーについて迷っていたそうです。その答えをくれたのが、ジャッジテーブルでした。ポーリングアートの技法で色付けされており、元の色を残しながら異なる色を重ねて新しい色を生み出しています。これを見て、「コーヒーの酸と甘さを最大限引き出すためのシナジー」を理想にしたそうです。

演出

ジャッジ席のボックスの中に副材料が入っていて、ジャッジに取り出してもらい、コースターの上に置いてもらう構成でした。

レシピ

ベースは、エリプスの4ショットです。エスプレッソと同じレシピで抽出し、3つの副材料を加えます。

  1. エリプス×チロソのアロマウォーター(40g)
    • ジャミソン氏とジョアン氏のつながりをイメージしています。
    • エリプスとチロソを2:1でブレンドしてドリップし、エバポレーターで蒸留して香りだけを取り出します。
    • 80℃にして香りを開かせます。エリプスのシトラス感とシナジーして、ネーブルオレンジが出ます。
  2. 蜂蜜とトマトの乳酸発酵シロップ(50ml)
    • ジョアン氏のラクティックプロセスに着想を得ています。
    • 国産のアカシア蜂蜜、イエロートマト、水を1:1:10で混ぜ、25℃で乳酸発酵させます。
    • 蜂蜜のフローラルな甘さと、イエロートマトの華やかな旨味が、ストーンフルーツのフレーバーとシナジーして、イエローピーチが出ます。
  3. カモミールとイチジクの素材
    • エリプスのウォッシュドが、フローラルさを向上させたことに着想を得ています。
    • グラインドしたものを0.1gずつ加えます。エリプスのフローラルノートを強化して、ハニーサックルのフレーバーを引き出します。

最後にブレンダーで攪拌し、スムースでコーティングされた質感に仕上げます。提供温度は40℃で、競技終了後に飲んでもらいます。

フレーバー

イエローピーチ、ハニーサックル、ネーブルオレンジ。オレンジワインのような華やかさでロングフィニッシュです。

まとめ

3つの原動力(好き、人とのつながり、届けたい思い)を、3つのドリンクのコンセプトに対応させた構成でした。生産者との関係性も一貫しています。ジャミソン氏は、エスプレッソ用のコーヒーを作る理想で、ジョアン氏とは、抽出された時の美味しさという理想を共有しています。

締めは「コーヒーの美味しさは、コーヒーを飲んでくれる人のためにある。コーヒーも、そして僕たちも人のためにあるものだと胸を張れるように」でした。安部選手は焙煎機の変更から抽出後の処理まで、エスプレッソの工程全体を見直したことも特徴です。

南條 裕乃選手(ヒサシヤマモトコーヒー Unir 京都店)

テーマ:生産者の思い、土地、その背景まで届ける

「今、バリスタが本当にお客様に届けなければいけないことは何か」という問いから始まりました。南條選手は、これまでこの大会で最新の発酵プロセスのコーヒーを使い続け、それが最高の1杯だと信じてきたそうです。

転機は、フライングピューマスという、コロンビアの生産者がパナマで新しく始めたプロジェクトを知ったことでした。生産者のジョエル氏は、コロンビアのゲイシャでもパナマのゲイシャでも、植物としては同じで、違うのは環境なのだと話しました。どちらが優れているわけではなく、素晴らしい品種の違う表情だと。南條選手は、自分が本当に届けたかったのは最新プロセスの表情だけではなく、生産者の思い、その土地、その背景まで伝えられるドリンクだったと気づいたそうです。

構成は、エスプレッソとミルクビバレッジでそれぞれ違う表情のコーヒーを使い、シグネチャーでは両方を使うものです。

エスプレッソ:パナマ フライングピューマス ゲイシャ(オセロット区画)

コーヒーと生産者

エスプレッソは「コーヒーそのままを味わってもらうドリンク」であり、育ったテロワールをそのまま感じてほしいと考えて選んだそうです。フライングピューマスは、土地に手をかけず、共に歩むことでテロワールがどう応えてくれるかという思いで、コーヒーを生産しています。

オセロット区画の周りには原生林が広がり、「バハレケ」と呼ばれる細かな霧が立ちこめ、鳥の声が聞こえます。原生林は、強すぎる日差しや風からコーヒーを守っています。南條選手は、ジョエル氏が、コーヒーにいつ手を加えない方がよいかを大切にする姿に感動したそうです。

演出

この様子の動画を、タブレット画面(1番のボタン)で見てもらってから飲んでもらう構成でした。

カップ

ねらいは、テロワールと品種の特徴が存分に発揮されたアロマを感じてもらうことです。ワイングラスを参考にした形状の、蓋付きオリジナルカップを用意しました。アロマを閉じ込めます。飲み方は、まずカップを手に取らず、上の穴からアロマを楽しみます。クレマは崩れますが、スワリングで液体に空気を含ませ、より滑らかなタクタイルにします。蓋を取り、スプーンなしで2口です。

フレーバー

オレンジ、フローラル、ネクタリン。ミディアムローウェイトで、スムースなテクスチャーです。

ミルクビバレッジ:コロンビア エル・ディビソ(ティピカ・メホラード ナチュラル)

コーヒーと生産者

生産者ネストル氏は、「人の手を加えることで、どこまで風味を高められるか」に挑戦している人物です。エスプレッソのパナマとは対照的に、プロセスで新しい表情を追い求めたコーヒーとして、このロットを選びました。コーヒーとミルクのハーモニーで、新しい表情を作る狙いです。

品種はティピカ・メホラードで、ナチュラルです。動画(2番のボタン)では、4回の発酵を重ねる様子が紹介されました。使う微生物だけでなく、4回の発酵工程の温度、時間、pHを、0.1単位で細かく管理しているそうです。

ミルク

カスタムミルクは、低温殺菌牛乳70%の凍結還元ミルクとライスミルクを4:1で合わせたブレンド。複雑な甘さと滑らかな質感で、コーヒーをさらに新しい表情に変えます。

フレーバーと提供

フレーバーは赤肉メロン、キャラメル、チョコソフトクリームです。スプーンなしで2口、プロトコル通りの提供でした。

シグネチャービバレッジ

コンセプト

エスプレッソでは人の手を加えすぎないよう作られたパナマ、ミルクでは人の手でどこまで風味を高められるか挑戦したコロンビアを使いました。アプローチは違っても、美味しいコーヒーを届けたいという思いとゴールは同じ、という考えで、両方を使ったシグネチャーです。

レシピ

事前に、それぞれのカテゴリーのレシピで抽出して冷やしておいたエスプレッソ4ショット分に、2つの材料を加えます。材料1を15g、材料2を160g加え、窒素技法と液体窒素で急冷します。

材料1:パナマのテロワールを象徴する材料(15g)

農園に生えているメキシコヒマワリの蜂蜜と、パナマで親しまれているウォーターケフィア「ティビコス」を同量で混ぜ、冷蔵で24時間置いたものです。自然そのものの材料で、パナマのテロワールを引き上げます。

材料2:人の手で管理した材料(160g)

コロンビアの発酵プロセスを参考にしています。マテ茶1リットルに、きび糖100gとスコビー100gを加え、2日間発酵させます。そこにパイナップルの果肉30gを加え、さらに2日間、嫌気性発酵させて完成です。2次発酵まで管理しやすいスコビーとパイナップルが、ティピカ・メホラードとは別のトロピカル感をプラス。窒素技法で、フレッシュ感を保ちます。

仕上げ:バハレケの再現

動画で見せたパナマの霧「バハレケ」を、グラスの下のスペースで再現します。カリブ海の塩1g、マホガニーウッド10g、レモンピール1g、水1リットルを50%まで煮詰めて蒸留した液に、液体窒素を加え、アロマの霧を発生させます。見た目だけでなく、ボタニカルな香りと少しの塩分が、パナマのテロワールを際立たせます。

フレーバーと飲み方

冷たいドリンクで、温度変化で味が変わります。

1口目:霧がグラスに満ちてから飲みます。フレーバーはオレンジジャスミンで、パナマのテロワールを感じます。飲み終えたら、グラスは茶色のコースターに置きます。

2口目:競技終了後、10回スワリングして飲みます。フレーバーはグレープで、コロンビアの発酵を感じます。

まとめ

「パナマのテロワール(手を加えない)」と「コロンビアの発酵(手を加える)」という、正反対のアプローチを1杯に統合した構成です。動画(1番、2番)を使って、生産者の土地や発酵の様子を飲む前に体験してもらう演出も特徴です。

締めは「いろんな表情のコーヒーを、生産者の思い、背景まで伝えて体験してもらうこと。これこそが、発展していくスペシャルティコーヒーの世界で、今バリスタが届けなくてはいけない使命」でした。

衛藤 匠吾選手(direct coffee kyoto)

テーマ:感情と色

私たちには感情があります。嬉しい時も悲しい時も、いつだって感情とともに生きています。衛藤選手は、スペシャルティコーヒーからもらったたくさんの感情を基に成長を続けていて、今回は「色を掛け合わせて、感情をみなさんと分かち合う」ことをテーマにしました。

フレーバーから色を感じ、イラストからも同じ色を感じることで感情が呼び起こされ、味覚体験とリンクします。提供順は、エスプレッソ(悔しさ・紫)、シグネチャー(憧れ・赤)、ミルクビバレッジ(嬉しさ・ピンク)で、イラストを見ながら飲んでもらう構成です。

色を使った表現は昨年あたりから取り入れており、今年は感情をテーマにしたいと決めたあとで、色を使うかを考えたそうです。感情は着る服のように、気分と密接に関わるため、味覚と合わせることで良い体験が生まれると考えたといいます。この提供順も、実際にやってみて「とても気に入った」と話しています。

エスプレッソ:パナマ ラ・カブラ ゲイシャ コールド・ファーメンテーション・ナチュラル

感情のストーリー

19歳のカフェ専門学生の頃、同級生たちが抽出をコントロールできるようになる中、衛藤選手にはその感覚が分かりませんでした。わかるようになりたいのにわからない。できるようになりたいのにできない。悔しくて、「誰よりも努力してみせる」と心に決めたそうです。

毎日努力し続けて気づいたのは、「好きじゃなかったらこんなに悔しくならない」ということでした。悔しさの分だけ、自分がコーヒーを好きなことを実感でき、明日も努力しようと思えた、と語っています。

コーヒーと農園

使用したのは、パナマ・ラ・カブラのゲイシャ、コールドファーメンテーションのナチュラルです。衛藤選手は、パナマゲイシャの洗練された味わいが大好きで、過去のJBCで最も多く使ってきたコーヒーです。洗練された味わいを持つからこそ、自分の抽出が完璧でないことを実感しやすく、いつも悔しさを感じていました。

農園も、過去の悔しさから生まれました。かつて傾斜地では、チェリーの熟度が不均一になり、クオリティを高めきれませんでした。カップクオリティを限界まで高めるため、あえて平坦な土地にラ・カブラは生み出されました。日照時間が長くなって全チェリーが完熟し、エレガントな紫色のフレーバーが生まれます。

一方、平坦な土地は、病害が発生すると農園全体に一気に広がるリスクがあります。そこで、自家製の有機物で土壌環境を豊かにしてゲイシャの木の生命力を高め、チェリーの状態を毎日肉眼でチェックしています。「悔しさを力に変えて、それを乗り越えることで、私たちはコーヒーのクオリティを高めることができる」。この感情をありのまま表現するため、ラ・カブラを自らエスプレッソで抽出して提供します。

    抽出と提供

    フレーバーはプラム、ブラックティー、バイオレットです。ミディアムローウェイトで、スムースなテクスチャー、フローラルなフィニッシュです。フレーバーとイラストの両方から、鮮やかな紫色を感じてもらい、感情と味覚体験をリンクさせます。

    ミルクビバレッジ:コロンビア フィンカ・ミラン ウォッシュド・アナエロビック・ファーメンテーション

    感情のストーリー

    高校3年生のオープンキャンパスで、初めてラテアートを見た時に、人生が変わったそうです。綺麗なラテアートに嬉しくなり、その優しい味わいにも嬉しくなり、人生をかけたいと思える職業に出会えたことも嬉しかった、と語っています。この嬉しさをみんなと分かち合いたいと、抽出、スチーミング、ラテアート、必要なスキルを磨き続けてきました。

    コーヒーとプロセス

    使用したのは、コロンビア フィンカ・ミランのウォッシュド・アナエロビック・ファーメンテーションです。嬉しさを分かち合える喜びを、改めて教えてくれたコーヒーです。飲んでくれた人が「こんなフレーバーは初めて」と驚いたり、喜んだり、「今日ここに来てよかった」と言ってくれたりしたそうです。

    プロセスでは、フルーツから抽出した天然酵母を発酵の起爆剤とすることで、フローラルさとフルーティさを極限まで高めています。

      抽出とスチーミング

      エスプレッソは、22g→33gで抽出します。鮮やかなピンク色のフレーバーに仕上がります。スチーミングは、縦の対流と横の対流を3:7でコントロールしつつ、回転速度を限界まで高めて、スムースなテクスチャーにします。これにより、ミルクビバレッジのピンク色のフレーバーを、しっかり楽しんでもらいます。

        ミルク

        2種類の凍結還元ミルクを、6:4の割合でブレンドします。52℃のミルクを70g注ぎます。1つ目は低温殺菌牛乳です。誰にでも親しみやすい優しい甘さが、チョコレートのフレーバーを生みます。2つ目はライスミルクです。フレーバーをハイライトし、甘さを高め、カシスのフレーバーが生まれます。

          フレーバーと提供

          カシス、チョコレート、キャラメルです。宣言後に、スプーンなしでそのまま飲んでもらいます。

          シグネチャービバレッジ

          感情のストーリー

          学生の頃、先生を応援するために、このステージ(SCAJ)を初めて訪れました。先生がシグネチャードリンクを作る姿を見て、「この人はこのコーヒーが大好きなんだ」と感じ、羨ましくなったそうです。自分も、大好きなコーヒーをどこまでも追求してみたい。それが憧れの原点です。

          ベース

          事前にすべての素材をデキャンタで混ぜ合わせ、冷やしておきます。エスプレッソは、先ほどのラ・カブラを4ショット使います。大好きなパナマゲイシャを追求することは、衛藤選手にとって終わりのない挑戦でもあります。

          副材料1:クラリファイドウォーター(14g)

          ストーンフルーツ系の甘さで華やかさを引き上げるため、モモのコンポート液20g、ココナッツミルク30g、ラクトースフリーミルク30g(シルキーなテクスチャーを生み出すため)、ベルガモットピューレ5g(酸の質を高めるため)を合わせ、ミルクウォッシュで澄ませたものです。これをドリンクに14g加えます。

          衛藤選手がパナマゲイシャを好きになったきっかけは、テロワールから生まれる華やかなフレーバーに圧倒されたことです。この華やかさをバリスタの技術でさらに高め、「パナマゲイシャがより多くの人に愛されてほしい」という思いで、この材料を選びました。ラ・カブラの華やかさが引き上がり、新たにレッドアップルのフレーバーが生まれます。

            副材料2:スーヴィードリキッド(50g)

            ハイビスカス0.5g(フローラル濃度を高める)、ウーロン茶2g、ハチミツ20g(アフターテイストを長くする)、水50gを合わせ、30℃で半日かけて抽出します。

            ラ・カブラのコールドファーメンテーションからヒントを得て、低温にすることで透明感を守りつつ、長時間かけてフレーバーを発達させました。これを加えることで、ラ・カブラの紫色のフレーバーが赤色へと変化し、新たにローズヒップのフレーバーが生まれます。

              仕上げと提供

              デキャンタで混ぜ合わせて、シルキーなテクスチャーを作ります。提供温度は15℃で、ドリンクの赤色のフレーバーを明確に感じられるようにします。フレーバーはレッドアップル、ローズヒップ、さくらんぼです。シルキーなテクスチャーと、フローラルなフィニッシュです。

              グラスの脚を持って、正面から2口。ラ・カブラのフレーバーを変化させて出会えた赤色と、憧れを連想させる赤色が、イラストによってつながり、シグネチャーが完成します。

              まとめ

              悔しさ、憧れ、嬉しさという3つの感情を、紫、赤、ピンクという3つの色で、コーヒーのフレーバーとイラストに結びつけた構成でした。エスプレッソの紫(プラム、バイオレット)から、シグネチャーで赤(レッドアップル、ローズヒップ)に変化させ、ミルクではピンク(カシス、チョコレート)で締めています。

              ファイナル初出場まで12年かかりました。何度も諦めそうになったものの、諦めて「よかった」と思うより、やって悔しい思いをするほうがましだと考えて続けてきたそうです。サポートは、direct coffee kyotoのオーナー西尾氏と山本氏が務めました。山本氏は、練習や味のチェックなど、細かい部分を支えています。

              石谷 貴之選手(TAKA ISHITANI)

              テーマ:もっと良くしたい

              バリスタを始めた約20年前から変わらない気持ちが、このテーマです。最初に「もっと良くしたい」と思った対象は自分自身でした。当時は自分の抽出が合っているのか、この味で本当にいいのかも分からず、だからこそ目の前の1杯に丁寧に向き合い、何度も抽出して味わい、少しずつ理解していきました。1つ分かると次を知りたくなり、その中でコーヒーの魅力を見つけた瞬間が本当に嬉しいと語ります。

              その気持ちは、自分自身から仕事、そしてコーヒー業界へと広がりました。この20年で業界は進化し、いいコーヒー、いいツール、いい情報がすぐ手に入るようになりました。その中で、バリスタだからこそできることを広げるには、学びと経験を生かし、考えて試すことが必要だと言います。

              締めは、「みんなの考えや技術に触れて、自分ももっと良くしたいと思ってきた。今度は自分の姿が誰かの新しい刺激につながり、それが続いていくことで、この業界はもっと前に進み続ける」という言葉でした。そして「1人1人がもっと良くなりたい気持ちを持ち続ければ、この業界を一緒にもっと良くしていける。この成長に終わりはない」と結びました。

              エスプレッソ:パナマ エリダ農園 ゲイシャ トレ ナチュラル

              コーヒーと生産者

              使用したのは、パナマ・エリダ農園のゲイシャ、トレ区画のナチュラルです。エリダの該当エリアにゲイシャが植えられたのは約20年前で、石谷選手がバリスタを始めたのと同じ頃です。農園主のウィルフォード・ラマスタス氏も、長い間「もっと良くしたい」と思い、この土地に向き合ってきました。

              石谷選手は今年も農園を訪れ、一緒にカッピングをしました。甘さにボリュームがあり、「エスプレッソにしてみたい」と思ったのがこのコーヒーです。ラマスタス氏は、こう話したそうです。エリダには標高2,000mを超えるエリアがあり、標高が高いほどコーヒーのキャラクターは豊かになる。それでも自分が選んだのは、標高1,800mの低いエリアで、「一番甘くていいエリアだから」。石谷選手は、これはきっと素晴らしいエスプレッソになると確信しました。向き合う中で、甘さがあるからこそ感じられる、厚みのある果実感と質感の素晴らしさを見つけ、その魅力を見つけた瞬間にすごく嬉しくなったそうです。

                ロットと焙煎

                このコーヒーは、3月に収穫したニュークロップです。そのため水分が多く、ローストではソーキングを行い、熱を慎重に与えました。エイジングは5週間しっかりとって、フレーバーを引き出しています。

                  抽出レシピ

                  抽出:93.5℃、20.5g→44g。

                  グラインダー:回転数の低いネイキッドで、粒度をより均一に整え、質感の土台を作ります。

                  バスケット:あらかじめ常温にしておき、心地よいフローラルな味わいを狙います。

                  タンパー:クラシックな58mmのフラットタンパーで、ゆっくり力を加えて粉の密度を高め、蜂蜜のような甘さを引き出します。

                    フレーバーと提供

                    フレーバーはオレンジ、アプリコット、はちみつ、ジャスミンです。ミディアムウェイトで、シロッピーでスムースなテクスチャーです。オレンジジュースのようなジューシーで心地よいフィニッシュです。提供後はまずクレマを確認してもらい、飲まずに待ってもらいます。飲むときは、付属のスプーンで5回混ぜてから飲んでもらい、使用後のスプーンは白い皿に置きます。

                    準決勝ではオレンジ、ピーチ、ハチミツと宣言していましたが、決勝ではステージ上でアプリコットを加える形に変更しました。エージングで味が変化したため、直前に飲んだ印象を宣言したほうが評価に有利と判断し、裏で試飲した際にアプリコットを感じて、チームで相談した結果です。

                    ミルクビバレッジ:コロンビア リベラ ゲイシャ

                    コーヒーと生産者

                    使用したのは、コロンビア リベラのゲイシャです。生産者は、発酵の研究を続けているアンドレス氏。プロセスは、モスト(果汁)とバクテリアを使った発酵に、さらに酵母を加えるもので、力強いフルーティさを作ります。焙煎は約3週間前で、前半にゆっくり熱を与え、フレーバーを発達させました。エスプレッソで感じるストロベリーなどの果実感に対して、ミルクに負けない力強いフレーバーが必要だと考えて選んだそうです。

                      抽出レシピ

                      グラインダー:回転数の高いレブゼロで、フレーバーを引き出します。

                      抽出比:1:1.5で果実感を凝縮し、ベリーの味わいを狙います。21.5g→34gです。

                      エスプレッソとミルクの比率:1:4で、チョコレートアイスクリームの美味しさを楽しんでもらいます。

                        ミルクの工夫:凍らせたラクトースフリーミルクでスチーム時間を延ばす

                        ミルクのテクスチャーと甘さは、スチームによって大きく変わります。石谷選手は、より滑らかで甘いミルクが作れないかと考え、スチーム時間に注目しました。甘さをサポートするラクトースフリーミルクを凍らせた状態で100g使い、そこにクリーンなテイストを保つ低温殺菌牛乳を70%まで濃縮したもの250gを加えて、52℃までスチームします。

                        凍らせたラクトースフリーミルクによって温度上昇が緩やかになり、スチーム時間を通常より約6秒長くできます。攪拌する時間を長く取れることで、より滑らかなテクスチャーと甘いミルクになります。回転を上げて攪拌すると泡が細かくなると考えてきましたが、すぐに温度が上がってしまい、良いミルクが作れませんでした。チームで案を出し合う中で、凍らせるアイデアに至りました。一方で、2口目以降が水っぽくなる課題があり、最後まで飲まれることを想定して比較したそうです。マシンはドライ寄りのスチームで、その性能に合わせた設計だと、チームが補足しています。

                          フレーバーと提供

                          フレーバーはストロベリー、ラズベリー、チョコレートアイスクリームです。スムースで心地よいテクスチャーです。ビジュアルを確認してもらい、飲まずに待ってもらいます。スプーンは使わず、そのまま飲んでもらいます。準決勝より決勝のほうが、赤い果実感が出て透明感が増したとのこと。

                          シグネチャービバレッジ

                          コンセプトとベース

                          生産者、ロースター、バリスタ、他業界の仲間など、これまで出会った人たちから受けたインスピレーションを形にしたドリンクです。コーヒーはエスプレッソと同じエリダです。ウィルフォード氏がダークルームで3週間行ったドレイン処理が、クリーンな果実感を引き出していると語っています。

                          抽出は、エスプレッソコースと同じレシピです。冷たい「ロックスタイル」のドリンクで、エスプレッソは最後に2層にして、見た目からも美味しそうに仕上げます。

                            副材料1:ホワイトグレープの蒸留水とホワイトバルサミコ

                            フレッシュなホワイトグレープから作ったブドウの蒸留水20gを加え、みずみずしさを足します。ホワイトバルサミコ4gを加え、酸に輪郭を出します。これにより、新たに梨のような味わいが生まれます。

                              副材料2:カカオハスクティーのピーナッツバターミルクウォッシュ(80g)

                              ロースターがソーキングで質感を向上させたように、石谷選手もドリンクに厚みをつけたいと考えました。90℃のお湯200gに、カカオハスク10gとクエン酸2gを加えて5分抽出します。これをピーナッツバター20g、ミルク40gと合わせ、フィルターで濾して、1〜2時間置いて馴染ませます。ピーナッツのほのかな苦味が全体のバランスを整え、カカオハスクの酸がストーンフルーツを引き立てます。

                                副材料3:白檀のコーディアル(70g)【バーテンダーに学んだ素材選び】

                                石谷選手が「また飲みたい」と思うカクテルには長い余韻があります。理由を聞くと、バーテンダーは「メインの素材とはあえて異なる素材を1つ加えて、奥行きを作っている」と答えました。そこで、このコーヒーとは異なる香りの白檀を使い、コーディアルにして加えます。水300gに白檀5g、グラニュー糖100gを加え、50℃で2時間スーヴィードします。低温で柔らかな香りを抽出し、アフターのフローラルを作ります。

                                  蜂蜜ウォーターと仕上げ

                                  コーヒーの蜂蜜と水を1:4で合わせた蜂蜜ウォーターを40g加え、甘さのバランスを整えます。氷30gを加えてミキサーで混ぜ、クリーミーなテクスチャーを作ります。ステンレスのボールで加水せずに冷やし、ステアで液体を一体化させます。

                                  フレーバー

                                  ホワイトピーチ、オレンジ、アフターにオレンジブロッサムです。クリーミーで心地よいシロッピーなテクスチャーです。

                                  まとめ

                                  準決勝で「100%出し切れなかった」と話した後の巻き返しでした。決勝後は「熱が入ってやりきれた」とコメントしています。エスプレッソとミルクで、グラインダーを使い分けています。エスプレッソは低回転で柔らかい質感、ミルクは高回転でフレーバー重視です。2台を両側に置いたのは、ジャッジと近くで会話するためです。

                                  3つのドリンクに「もっと良くしたい」という気持ちの広がりを重ねました。エスプレッソは自分自身(農園主との対話)、ミルクは仕事(スチームの探求)、シグネチャーは業界(他業界の仲間から学ぶ姿勢)です。2007年の初出場以来、ほぼ毎年出場し続けています(休んだのは1回)。WBC東京が20年ぶりに開催されるタイミングでの引退説が話題になりましたが、チーム側は出場継続を勧めていました。コーチ・サポート役として、ワールドブリューワーズカップ・チャンピオン(WBrc2018)の深堀絵美氏が登壇しています。

                                  野澤 隆成選手(猿田彦珈琲)

                                  テーマ:向上心と鍛錬

                                  野澤選手は8年前、1杯のカフェラテをきっかけにコーヒーに夢中になりました。「もっとコーヒーを知りたい。コーヒーを入れられるようになりたい」という思いからこの世界に入り、バリスタになってからも向上心を持って向き合ってきたそうです。その思いからラテアートの競技にも取り組み、昨年は世界の舞台で2位という結果を残しました。野澤選手にとって、大きな1つの到達点でした。

                                  しかし、そこで満足せず、さらに向上するために今この舞台に立っています。ラテアートで1つずつ積み重ねてきたように、今度はこの新しい舞台で、新たに鍛錬を積み重ねる。そのテーマが「向上心」と「鍛錬」です。3つのドリンクは、エスプレッソ(向上心)、ミルク(鍛錬)、シグネチャー(向上心と鍛錬から生まれた新しい挑戦)に対応しています。構成は、はじめにシグネチャー用のショットを抽出して冷やしておくところから始まります。

                                  エスプレッソ:パナマ ジャンソン農園 ゲイシャ ナチュラル

                                  コーヒーと生産者

                                  使用したのは、パナマのジャンソン農園のゲイシャ、ナチュラルです。生産者のカイ・ジャンソン氏は30年以上コーヒーと向き合い続け、「今でも生産者としてできる限り多くのことを学ぶことが目標」と話しています。

                                  毎年100を超える異なるロットを作り、より良いコーヒーを追求しています。今回のロットは、48時間の酵母発酵のあと、温度と湿度を管理したダークルームで11日かけて乾燥させています。これにより、タータリック(酒石酸系)のアシディティを引き出しています。生産だけでなく、自ら焙煎や抽出まで行い、自分たちのコーヒーがどうすればより良い1杯になるのかを学び続けています。野澤選手は、「もっと学び、もっと良くしようとする」その向上心に共感して、エスプレッソに選びました。

                                    焙煎

                                    野澤選手自身も、より良い1杯にするという向上心を持って、このコーヒーと向き合ってきました。前半に熱を軽く与えて甘さを引き出し、ディベロップメントを1分30秒、トータル9分で仕上げています。これによって、タクタイルとテイストのバランスを整えています。

                                      カップ

                                      もう1つ着目したのが、カップです。ジャンソン氏は約10年前から、カップの形状によって味の感じ方が変わることに着目し、カップの研究を続けています。野澤選手は、彼の考えから着想を得て、より良い1杯にするためにさまざまなカップを試しました。ジャンソン氏のコーヒーが持つ素晴らしい質感とフレーバーを、最もハイライトしてくれたカップを使います。

                                      外側に反った飲み口と厚みによって、液体が口全体にゆっくり広がり、質感をより感じやすくなります。カップの背が低いため、飲むときに口と壁面の距離が近くなり、香りをより感じやすくなります。これによってフレーバーを明確にキャッチできます。飲み方は、カップの正面から2口です。

                                        抽出レシピ

                                        20g→44gで、シルキーなテクスチャーを作ります。抽出後すぐに飲むのではなく、液体の温度を下げることで、フレーバーをより明確にしています。

                                          フレーバーと提供

                                          提供後は、まずクレマのみ確認。飲むときは、スプーンで10回混ぜてから飲んでもらいます。液体がしっかり混ざり、プラムのフレーバーを感じられます。使い終わったスプーンは元の位置に戻します。

                                          フレーバーはプラム、オレンジ、ダークチョコレートです。ミディアムローウェイトで、シルキーなテクスチャー、カカオのポリフェノール感のあるフィニッシュです。

                                          ミルクビバレッジ:コロンビア フィンカ・サルサ パカマラ ナチュラル

                                          コーヒーと生産者

                                          使用したのは、コロンビア フィンカ・サルサのパカマラ、ナチュラルです。生産者のジョナサン・ガスカ氏は2010年頃、コマーシャルグレードのコーヒーを生産していましたが、より良い品質を求めて、スペシャルティコーヒーの生産、そして発酵技術に挑みました。

                                          初めは多くの失敗を経験し、大きな損失もありました。それでも発酵について学び、日々改善を重ね、現在は温度や時間を細かく管理して、発酵そのものをコントロールし、品質を高めています。野澤選手は、この姿勢から、日々積み重ねる鍛錬の大切さを感じて選びました。プロセスは、150時間の嫌気性発酵で、嫌気環境の中で乳酸発酵を促し、その後、約20℃の水で急冷します。これによってチェリーのフレーバーを引き出しています。

                                            ピッチャーの工夫

                                            野澤選手は、ジョナサン氏の「日々改善を重ね、品質を高め続ける姿勢」に刺激を受け、より良いミルクビバレッジにするためにスチームを見直しました。着目したのは、ピッチャーです。形状によってスチームの仕上がりは大きく変わるため、日々さまざまな形状を試し、改善を積み重ねてきました。

                                            今回は、口径が狭く縦長のピッチャーを使用します。スチームチップを通常より1cm深く差し込めるため、ミルクに強い回転を作り、均一に攪拌できます。これにより、ミルクシェイクのようなテクスチャーになります。

                                              レシピ

                                              21g→35gで抽出。ミルクは52℃で80gを注ぎます。甘さと質感を高めるため、50%に濃縮した低温殺菌牛乳を使用しています。

                                                フレーバーと提供

                                                フレーバーはダークチェリー、ダークチョコレート、チェリーリキュールです。ミルクシェイクのテクスチャーです。

                                                シグネチャービバレッジ

                                                ベース

                                                エスプレッソと同じレシピで抽出して冷やしておいた、ジャンソン農園のゲイシャを4ショット使います。エスプレッソでお伝えした向上心、その中で向き合ったコーヒーを、シグネチャーのベースに使いました。

                                                副材料1:フルーツビネガーのシュラブ(50g)

                                                ジャンソン氏のナチュラルプロセスの発酵から着想を得て、同じく発酵で作られるビネガーを使います。ジャンソン氏のゲイシャが持つタータリックなアシディティに対して、マリックアシディティ(リンゴ酸系の酸)を代表させ、青森県産のりんごビネガーを使用。りんごビネガー、グラニュー糖、水を1:3:5で混ぜ合わせます。これにより、マリックとタータリックの2つの酸が重なり、フレーバーの可能性を広げます。

                                                  副材料2:パカマラのサッカラム(8g)

                                                  ミルクビバレッジの生産者ジョナサン氏の取り組みから、野澤選手は、改めて鍛錬の大切さを感じました。その鍛錬を象徴する材料として、彼のパカマラを使ってサッカラムを作りました。パカマラ、グラニュー糖、水を1:1:2で混ぜ合わせ、1〜2時間漬け込み、ペーパーで濾します。パカマラのチェリーのフレーバーと、ジャンソン氏のプラムのフレーバーが重なり、新たにネクタリンのフレーバーが生まれます。

                                                    仕上げと提供

                                                    ブレンダーで混ぜ合わせ、約10℃で仕上げます。液体を均一に一体化し、滑らかで一体感のあるテクスチャーになります。フレーバーを開かせるため、5回スワリングして飲んでもらいます。

                                                      フレーバー

                                                      スイートレモネード、ネクタリン、シングルオリジンチョコレート(チョコレートのフレーバー)です。ジューシーでリフレッシングなテクスチャー。

                                                      まとめ

                                                      3つのドリンクを、「向上心」(エスプレッソ)と「鍛錬」(ミルク)を重ねて、シグネチャーでまとめる構成でした。生産者から学んだことは2つです。ジャンソン氏の「学び続ける向上心」と、ジョナサン氏の「失敗から改善を重ねる鍛錬」です。焙煎の細かな設計(ディベロップメント1分30秒、トータル9分)、カップの形状、ピッチャーの形状と、道具や工程の見直しを積み重ねた発表でした。

                                                      締めは、「8年前の私が、世界の舞台を経験し、今新たな挑戦を迎えている自分を想像していなかったように、私たちにはまだ想像していない未来が待っているはずです。だからこそ、これからも向上心を持ち、鍛錬を積み重ね、挑戦を続けます」でした。

                                                      総括:2026年のJBCが示したもの

                                                      JBC2026の決勝6名のプレゼンテーションは、テーマも技法もそれぞれ異なりました。それでも通して見ると、共通する流れが4つありました。ここからは、latte mapが決勝を見て感じた傾向です。

                                                      1. 「何を使うか」から「誰のコーヒーか」へ

                                                      6選手全員が、生産者の名前、土地、背景を語ることからプレゼンテーションを組み立てました。

                                                      • 伊藤選手は、レイチェル氏、タミル氏、ネストル氏の3人から学んだ「試行錯誤」を軸に構成しました。
                                                      • 石谷選手は、エリダ農園のウィルフォード氏が一番甘い区画として1,800mを選んだ話を語りました。
                                                      • 安部選手は、ジャミソン氏とジョアン氏が共有する「抽出された時の美味しさ」という理想を挙げました。
                                                      • 南條選手は、フライングピューマスのジョエル氏の言葉をきっかけに、「最新の発酵プロセスの表情だけでなく、生産者の思いや土地まで届ける」ことを使命に据えました。
                                                      • 野澤選手は、ジャンソン氏の「学び続ける向上心」と、ジョナサン氏の「失敗から改善を重ねる鍛錬」を取り上げました。
                                                      • 衛藤選手は、悔しさから平坦な土地に生まれたラ・カブラの物語を、自身の感情と重ねました。

                                                      発酵プロセスや品種の希少性が、競技の中でも当たり前に語られるようになった今、バリスタの役割は味を説明することから、その1杯の背景を伝えることへと広がっているように見えます。

                                                      2. 発酵の「その先」を設計する

                                                      使用されたコーヒーには、嫌気性発酵、バイオリアクター、コールドファーメンテーション、乳酸菌や酵母の活用といった発酵プロセスが並びました。注目したいのは、シグネチャービバレッジにおいて、発酵から着想を得た副材料を自ら作り込んでいたことです。

                                                      • 伊藤選手:ミルクパインの葉と皮を発酵させたシュラブ、パロサントを使ったミルクウォッシュ
                                                      • 石谷選手:ホワイトグレープの蒸留水、白檀のコーディアル、カカオハスクティー
                                                      • 安部選手:エバポレーターによるアロマウォーター、蜂蜜とトマトの乳酸発酵シロップ
                                                      • 南條選手:スコビーとパイナップルの発酵液、液体窒素によるバハレケの霧の再現
                                                      • 野澤選手:りんごビネガーのシュラブ、パカマラのサッカラム
                                                      • 衛藤選手:ミルクウォッシュで澄ませた液、低温で長時間かけたティーベース

                                                      酸、香り、質感を、発酵、蒸留、ウォッシュといった技法で組み立てる点は共通しています。生産者の工程と、バリスタの工程を、1杯の中で重ねる試みが広がっています。

                                                      3. 「廃棄」と「地域」への視線

                                                      伊藤選手は、練習で出たミルクのロス、形が不揃いで廃棄予定だったパロサント、ミルクパインの葉と皮を素材に使いました。ミルクには、北海道産と島根県産の牛乳を選び、「日本でしか作れない味わい」を提示しています。安部選手も、国産蜂蜜やイエロートマトといった国内の素材を使いました。

                                                      生産国のコーヒーに敬意を払いながら、自分たちの足元の素材も使う。この姿勢は、タミル氏の「自国のアイデンティティを守る」という言葉と重なります。

                                                      4. ミルクビバレッジという設計領域

                                                      ミルクは、コーヒーを引き立てる脇役ではなく、設計する対象として扱われていました。

                                                      1. 濃縮:石谷選手、安部選手は70%、野澤選手は50%に低温殺菌牛乳を濃縮しました。
                                                      2. ブレンド:伊藤選手は北海道産と島根県産、衛藤選手は低温殺菌牛乳とライスミルク、安部選手は低温殺菌牛乳と低脂肪のジャージーミルクを組み合わせました。
                                                      3. スチームの工夫:石谷選手は凍らせたラクトースフリーミルクでスチーム時間を約6秒延ばしました。野澤選手は縦長のピッチャーで強い回転を作り、衛藤選手は縦と横の対流を3:7でコントロールしました。

                                                      ミルクの甘さに負けないコーヒー選び、ミルクとの比率、スチームの物理まで踏み込む姿勢は、ラテアートやミルクビバレッジの出身であるバリスタが多く入賞した決勝の特徴とも言えます。

                                                      演出にも表れた個性

                                                      • 伊藤選手:ステージ構成を工夫し、ジャッジと直接つながるカウンターの高さにしました。
                                                      • 安部選手:ポーリングアートのジャッジテーブルを、シナジーの答えとして引用しました。
                                                      • 南條選手:テロワールの動画と、液体窒素で霧を再現する演出を取り入れました。
                                                      • 衛藤選手:色とイラストで感情と味覚を結びつけました。

                                                      演出は飾りではなく、テーマそのものを体験として伝える手段になっていました。

                                                      結びに

                                                      決勝は、伊藤選手が718点で優勝し、石谷選手が714点で続く、4点差の接戦でした。猿田彦珈琲から3名が決勝に進み、優勝と3位、5位を占めています。

                                                      6つのプレゼンテーションには、技術の高度化が進むほど、バリスタ自身の問いと物語が問われる、という共通点がありました。伊藤選手が語った「便利なツールが増えるほど、バリスタ自身が味わいを確かめて試行錯誤することが重要になる」という言葉は、決勝全体を通した問いとも重なります。

                                                      来年4月には、20年ぶりにワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)が東京で開催されます。優勝された伊藤選手には、ぜひ世界一の栄冠を掴み取ってほしいと切に願います。伊藤選手、応援しています!がんばってください!