

WBC2026優勝は中国のPan Wei選手!おめでとうございますでし!
2026年10月22日から25日まで、パナマシティのPanama Convention Centerで開催されたWBC2026。競技は、エスプレッソ、ミルクビバレッジ、シグネチャービバレッジを各4杯、計12杯提供する形式で行われました。優勝は、中国のParking CoffeeのPan Wei選手です。日本代表の本間 啓介選手(サザコーヒー)は惜しくも決勝に進めず準決勝8位で大会を終えました。しかしながら本当に素晴らしいプレゼンテーションでした!
この記事では、各競技者のプレゼンテーションを高順位から順に、独自に解説していきます。公式資料(2026 WBC Rankings & Coffee Info)と、各選手の公式競技動画の英語字幕をもとに、latte mapが要約・解説したものです。字幕と競技中の発言を整理しているため、農園名・生産者名・数値(抽出レシピ、配合など)の一部に、聞き取りや解釈の誤りが含まれている可能性があります。正確な情報は、公式の配信映像および各選手・各社の発表をご確認ください。誤りにお気づきの際は、お手数ですがご連絡いただけましたら訂正いたします。





- WBC2026 最終順位と各ラウンドの得点
- 決勝進出者の使用コーヒー(公式資料)
- 優勝:Pan Wei選手(中国/Parking Coffee)
- 2位:Shing Win選手(マレーシア/One Half Coffee Roastery)
- 3位:Frederick Ruben選手(UAE/Benchmark Coffee)
- 4位:Gabrel Tan選手(オーストラリア/Veneziano Coffee Roasters)
- 5位:Jane Kawinnart選手(タイ/Fika & Co.)
- 6位:Jill Hoff選手(カナダ/Monogram Coffee)
- 日本代表:本間 啓介選手(サザコーヒー/準決勝8位)
- 総括:2026年のWBCが示したもの
WBC2026 最終順位と各ラウンドの得点
| 順位 | 選手 | 国 | 所属 | 予選 | 準決勝 | 決勝 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | Pan Wei | 中国 | Parking Coffee | 615.5 | 542.0 | 575.5 |
| 2位 | Shing Win | マレーシア | One Half Coffee Roastery | 589.5 | 572.0 | 567.0 |
| 3位 | Frederick Ruben | UAE | Benchmark Coffee | 590.5 | 499.0 | 528.5 |
| 4位 | Gabrel Tan | オーストラリア | Veneziano Coffee Roasters | 613.0 | 505.0 | 526.5 |
| 5位 | Jane Kawinnart | タイ | Fika & Co. | 643.0 | 556.5 | 521.0 |
| 6位 | Jill Hoff | カナダ | Monogram Coffee | 614.5 | 542.5 | 486.5 |
| 準決勝8位 | 本間 啓介(Keisuke Honma) | 日本 | サザコーヒー | 533.5 | 478.5 | — |
決勝進出者の使用コーヒー(公式資料)
| 選手 | 生産者 | 産地 | 品種 | プロセス |
|---|---|---|---|---|
| Pan Wei | El Pergamino | パナマ | Geisha | Washed |
| Pan Wei | Finca Las Flores | コロンビア | Geisha | Mossto Anaerobic |
| Shing Win | Yaneth Lucich | パナマ | Geisha | Washed |
| Frederick Ruben | Amoruso Family | パナマ | Geisha | Washed |
| Frederick Ruben | Jose Luttrell | パナマ | Geisha | Natural Extended Fermentation |
| Gabrel Tan | Finca Lerida | パナマ | Geisha | Washed |
| Gabrel Tan | Finca Ali | インドネシア | Kartika | 48h Anaerobic Natural |
| Jane Kawinnart | Kai Janson | パナマ | Geisha | Honey and Natural |
| Jill Hoff | Koyner Family | パナマ | Chakira | Natural |
| Jill Hoff | Reza Nurullah | インドネシア | Liberica | Yeast Fermented Anaerobic Natural |
優勝:Pan Wei選手(中国/Parking Coffee)
予選615.5点、準決勝542.0点、決勝575.5点。準決勝の得点はShing Win選手が上回っていましたが、決勝で2位に8.5点差をつけ、優勝しました。
テーマ:テーマ:家族の選択とコーヒーの未来
Pan Wei選手が競技全体の軸に置いたのは、「Every cup of coffee comes from a family(すべてのコーヒーは家族から生まれる)」というメッセージです。
きっかけ:過去3年間、コーヒー生産国を訪ね歩く中で、変化する気候のなかで「立ち止まることがもはや選択肢ではない」家族たちが、愛するコーヒーを守るために難しい決断をしている姿に出会いました。
バリスタの役割:その出会いが、バリスタとしての役割への考え方を大きく変えたそうです。「意味のある行動が農園から始まるなら、なぜカフェから始められないのか」という問いが出発点でした。
3つの家族:次の世代にコーヒーをより良い状態で残すため、3つの家族の物語を提示しました。
- 伝統を守る、パナマの家族(エスプレッソ)
- 革新を受け入れる、コロンビアの家族(ミルクビバレッジ)
- コーヒーに関わるすべての人の「コーヒーファミリー」(シグネチャー)
エスプレッソ
コーヒーと生産者
パナマのGeisha、Washedで、公式資料の生産者はEl Pergaminoです。この家族は、標高約1,500mでコーヒーを栽培してきましたが、気温が徐々に上がり、かつて優れたコーヒーを生んだ環境が不安定になりました。そこで栽培地をより高地へ移し、新しいテロワールを探したそうです。
Pan Wei選手は今年4月に農園を訪れ、その決断の結果を体験しました。現在のゲイシャは標高約2,200mで育ち、涼しい気温と、長く延びたチェリーの成熟により、花のような優雅さ、鮮やかな果実味、卓越したクリアさを表現できます。
収穫は、完熟したチェリーだけを選んで行います。精製はウォッシュドで、その後、管理された環境で25日間かけてゆっくり乾燥させます。高地のテロワールが生む個性を「変えず、守る」ための工程だと説明しました。
この考え方に合わせて、焙煎も組み立てています。焙煎士と共に、1ハゼ後のディベロップメントを1分、トータル10分とし、甘さを高めつつ、繊細なフローラルと鮮やかな果実味を守る設計です。
抽出レシピ
抽出量:20g→50g(抽出比率1:2.50)。この比率で、よりクリアで輪郭のある味が出て、テロワールを透明感をもって表現できるとしています。
リバース・タンピング(Reverse Tamping):全コースで使用したディストリビューションとタンピングを一体化するツールです。
- 回転する針でコーヒー粉を均一に分散させます。
- タンピング前に振動を与えて粒度ごとに粉を分け、細かい粉をパックの上側に置きます。
- ジャッジに端末を触って振動を感じてもらい、動画も見てもらいました。
- この振動で抽出の立ち上がりが緩やかになり、抽出の均一性が上がって、収率が1%以上増えます。甘さとキャラメルのような味が出しやすくなるそうです。
シグネチャーは冷たいドリンクのため、使用するエスプレッソは事前に抽出して冷やしておきます。このコーヒーは、エスプレッソとシグネチャーの両方で使います。
フレーバーと提供
フレーバーはエルダーフラワー、オレンジ、ピーチ、グリーンティー(フィニッシュ)です。ミディアムウェイトで、ジューシーなテクスチャー、長く優雅なフィニッシュです。提供では、まずクレマを評価してもらい、時計回りに5回撹拌してから飲んでもらいます。使ったスプーンは、小さなカップに戻します。
ミルクビバレッジ
コーヒーと生産者
使用したのは、コロンビア・ウイラ県のゲイシャです。公式資料の生産者は、Finca Las Floresです。創業者のヌビア氏は、30年前に家族と共に農園を築きました。コロンビアのコーヒー産地では、平均気温が10年あたり約0.3℃上昇している(最新データ)と、Pan Wei選手は紹介しました。標高の低い農園では、品質と経営の安定を保つことが難しくなっています。
そこでこの家族は、栽培地を変えるのではなく、「精製の方法」で革新する道を選びました。標高約1,500mで育つゲイシャを、完熟チェリーだけ選んで収穫し、モスト(ムシレージ由来の発酵液)を使って48時間発酵させます。その後、低温で25日間ゆっくり乾燥し、カカオやウォームスパイスの個性を保ちます。このモスト発酵液は、のちにシグネチャーでも再利用します。
抽出レシピ
抽出量:21g→35g(抽出比率1:1.67)。
焙煎:トータル12分、1ハゼ後のディベロップメント90秒。甘さ、フレーバーの輪郭、カップの安定性を高める設計です。
この家族の革新的なアプローチに触発され、Pan Wei選手も、バリスタとして自分なりのやり方でコーヒー体験を高める方法を探したそうです。
ミルク
牛乳を30℃で処理して水分を約30%除去し、質感と甘さを高めます。そこにピスタチオミルク50%を合わせ、風味の複雑さを加えます。コーヒーとミルクの比率は約1:3、提供温度は55℃です。
フレーバーと提供
フレーバーは、ウォームスパイス(特にシナモン)、チョコレート、ブルーベリー(フィニッシュ)です。なめらかなテクスチャーで、余韻が長く、全体は密度があり、なめらかで調和しています。提供後は、そのまますぐに飲んでもらいます。
シグネチャービバレッジ
コンセプト
最初の2杯では、気候変動の中でコーヒーを守る、2つの家族を紹介しました。3つ目に紹介するのは、この仕事を前へ進める、すべての人です。生産者、焙煎士、バリスタ、飲み手を含む、コーヒーファミリーです。Pan Wei選手はその一員として、コーヒーの旅路のすべての段階に着想を得た素材と技法をブレンドし、生産者の仕事の価値を、農園の外、カップの中へと広げました。ドリンクの名前は「Family Link」です。ジャッジは別のテーブルに移動して、受け取ります。
3つの要素
- パナマに着想を得た素材(40g):コーヒーチェリー・ハニー・インフュージョン
- ラマスタス家から、コーヒーの木のあらゆる部分に価値を見出す視点を学び、それに「第二の人生」を与えようと考えました。
- コーヒーチェリーの皮200gと、パナマとコロンビアのハチミツ200gを、3か月間熟成させたあと、濾過します。
- 濃縮した天然の糖分で、甘さと丸みが増し、エスプレッソのエルダーフラワーが、コーヒーブロッサムへと変化します。
- コロンビアに着想を得た素材(100g):UV殺菌したモスト発酵液
- ヌビア氏の仕事を、精製の工程で終わらせず、飲み手のカップにまで届けたいと考えて選びました。
- 発酵した果実の個性を最終ドリンクへ伸ばし、エスプレッソのピーチが、アプリコットに変化します。
- バリスタ自身の素材:窒素とスパークリングウォーター
- 窒素10gで、パナマとコロンビアの素材をなじませます。
- スパークリングウォーター80gで、ハーブのニュアンスを持つスパークリングワインのような、新しい体験を作ります。
フレーバーと提供
フレーバーは、レモングラス、アプリコットソーダ、スパークリングのホワイトグレープフルーツ、フィニッシュにコーヒーブロッサムです。活き活きとした発泡感があり、長い余韻。ジャッジには、水を飲んでもらったあと、「Time」の合図まで待ってもらいました。
まとめ
3つのドリンクに、3つの家族の選択を重ねた構成でした。高地への移動(パナマ)、精製の革新(コロンビア)、そしてコーヒーに関わる人々のつながりです。シグネチャーでは、チェリーの皮やモスト発酵液といった、生産の工程で出る素材を再利用しました。
最後に、自身の娘を抱きながら「20年後も、彼女はこのようなコーヒーを飲めるだろうか」と問いかけました。ジャッジに、液体をグラスの「地球」に注いでもらう演出で、コーヒーファミリーの全員(農業、そしてバリスタ)を表現しました。何もしなければ、未来は濁った水のようになるが、小さな意味ある行動を重ねれば、澄んだ未来にできる、という締めです。
冒頭の言葉「すべてのコーヒーは家族から生まれる」に戻って、競技を終えました。
2位:Shing Win選手(マレーシア/One Half Coffee Roastery)
予選589.5点、準決勝572.0点、決勝567.0点。準決勝の得点は、掲載された決勝進出者の中で最も高い数値でした。
テーマ:Moisture(水分の保護・補助・変換)
出発点:Shing Win選手は、コーヒー農園でも、海外のバーで抽出を調整するときも、必ず水分計(モイスチャーメーター)を持ち歩いています。周囲の湿度が分かるだけでなく、水分を理解することが、より良いコーヒーにつながると考えているためです。
3つの役割:水分の働きを、コーヒーの人生に沿って3つに分け、それぞれを1杯に対応させました。
- Protection(保護):産地での水分(エスプレッソ)
- Support(補助):水分を調整する(ミルクビバレッジ)
- Transformation(変換):水分の状態変化を設計に使う(シグネチャー)
エスプレッソ
コーヒーと生産者
使用したのは、パナマ・セロプンタ産のゲイシャ、ウォッシュドです。標高1,900m、火山性の土壌が強い土台を作ります。公式資料の生産者はYaneth Lucichです。
このテロワールを特別にしているのが、「バハレケ(Bajareque)」という細かな霧です。カリブ海から東の風がチリキ高地に吹き込み、温度差で霧が生まれて、一年を通して涼しく、湿度の高い気候になります。Shing Win選手はこれを「柔らかな熱帯気候」と呼びました。この霧は、柔らかな盾のようにチェリーを守り、成熟を遅らせます。そのため、糖や酸がゆっくり発達し、甘さの強さと、層になった複雑さが生まれます。
精製
収穫後は、水分が守る役割が自然から生産者へ移ります。
予備乾燥:アフリカンベッドで、日よけの下で4日間。水分を60%から20%まで素早く下げ、微生物の活動を抑えて、カビ臭のようなオフフレーバーを防ぎます。
本乾燥:温度と湿度を管理した暗室で、さらに約4週間。コーヒーを1層に広げ、通気を保って、均一でゆっくりした乾燥を促します。生豆の水分が10.5%に達した時点で終えます(周囲湿度の数値は、字幕では不明瞭です)。
これらの工程が、ゲイシャの花の香りを守り、フレーバーのクリアさを高めます。
抽出レシピ
20g→48g(抽出比率1:2.40)
フレーバーと提供
フレーバーは、オレンジ、プラム、オレンジブロッサムです。ミディアムウェイトで、シルキーなテクスチャーです。提供後は、5回往復して撹拌してから飲んでもらい、スプーンは銀のカップに戻します。「焦点を合わせてほしいのは、水分が産地から守ってきた、花と柑橘の個性」という説明でした。
ミルクビバレッジ
コーヒーの課題とパンの演出
繊細なウォッシュドのゲイシャは、ミルクと合わせると味が埋もれやすい、というのが、現代のバリスタが直面する課題です。Shing Win選手は、ウォッシュドのゲイシャをミルクの中でも輝かせて、より多くの人にこのコーヒーの魅力を届けたいと考えました。
その解として使ったのが、水分の調整です。説明のために、ジャッジにパンを割ってもらいました。左のパンは乾燥して脆く、崩れやすい。右のパンは柔らかく弾力がある。同じ生地でも、水分で挙動が変わります。コーヒー豆も同じで、パンを割る感覚が、グラインド中にコーヒーが砕ける様子を模しているという説明です。
豆の脱水
エスプレッソと同じ、パナマ産のウォッシュド・ゲイシャを使います。豆を30℃で12時間、脱水します。シリカゲルと一緒に密閉袋に入れ、低水分の環境を維持します。水分が少ない豆は、より脆くなり、粉砕時に超微粉が増えます。表面積が広がって抽出率が上がり、フレーバーの強度が高まります。花と柑橘の個性が、ミルクの中でも表現されます。
ミルクの濃縮
フレッシュミルク95%に、凍結乾燥したミルクパウダー5%を合わせます。凍結乾燥は、凍らせたミルクから昇華によって水分を完全に除き、濃縮された乳固形分だけを残す手法です。これをフレッシュミルクに戻すことで、全体の濃度が上がり、知覚される甘さが増してクリーミーな口当たりになります。1杯の中で、水分を2通りに使っています。コーヒーでは抽出を助けるために減らし、ミルクでは濃度を高めるために除きます。
抽出レシピとフレーバー
抽出は20g→36g(抽出比率1:1.80)。ミルクは50〜55g。フレーバーは、フローラルミルクティー、オレンジクリーム、クレームブリュレです。クリーミーなテクスチャーです。
シグネチャービバレッジ
コンセプト
水分のすべての役割を、設計の道具として使います。ウォッシュドのゲイシャを選んだ理由は、水分の効果を示せる、最もクリーンな形のコーヒーだからだそうです。2年前に訪れて水分への着想をくれた農園として、Finca El Paraisoの名をあげました。
材料
- オレンジブロッサムとライムリーフのハイドロゾル(30g):保護の象徴
- オレンジブロッサムとライムリーフ各20gを、減圧下、60℃で蒸留し、ハイドロゾル200gを得ます。
- 液体が気体になり、また液体に戻る、水分の状態変化です。減圧蒸留は、クリーンな抽出物を得る最も穏やかな方法だと説明しました。
- エスプレッソと合わさって、ゼラニウムのフレーバーが生まれます。
- 脱水プラムシロップ(60g):補助の象徴
- プラムを40℃で4日間脱水し、風味を凝縮します。
- 脱水プラム100g、白砂糖100g、水500gを合わせて、60℃で2時間、スーヴィードします。
- プラムのフレーバーが、赤ぶどうに変わります。
- 液体窒素による微細な氷結晶:変換の象徴
- 上記の混合物を液体窒素で凍らせ、細かな氷の結晶にします。一貫した氷にするために、事前に作ったものを用意しました。
- 冷やしたエスプレッソ4ショット(エスプレッソコースと同じ抽出)を、大きな氷で冷やして加え、ハンドブレンダーで混ぜます。
- 水分が、液体から固体、再び液体へと状態を変え、増粘剤を使わずに、新しいテクスチャーを作ります。
フレーバーと提供
フレーバーは、赤ぶどう、ゼラニウム、オレンジです。クリーミーなテクスチャーです。ジャッジには、「Time」の合図の後に、一口ごとに5回スワリングしてから飲んでもらいました。
まとめ
生産地の霧、乾燥、豆の脱水、ミルクの濃縮、蒸留、冷却を、すべて「水分」という1つの視点で説明した構成でした。コンセプトの一貫性が際立っています。締めでは、水分計を持ち歩くのは、数字そのものが重要だからではなく、その数字をどう使うかに気づくことだと語りました。背景にある、小さく見えないもの(水分)が、重要な要素になりうる、というメッセージです。パンを割る演出のように、目に見えない粉砕特性を、日常の食材で体験させた点も印象的です。
3位:Frederick Ruben選手(UAE/Benchmark Coffee)
予選590.5点、準決勝499.0点、決勝528.5点。4位とは2.0点差でした。競技順は、ミルク、エスプレッソ、シグネチャーの順です。
テーマ:Momentum(エネルギーと風味の制御)
発想:ロースターである Frederick Ruben選手は、良いコーヒーを作るのは、エネルギーの勢い(モメンタム)だと考えています。工程の途中でそれを失うと、結果がまったく変わってしまうからです。
定義:モメンタムとは、時間通りに終えることではなく、最初から適切なエネルギーを保ち、最後まで制御し続けることだそうです。
3つの制御:この考え方を3つのドリンクに適用しました。
- ミルク:濃度の制御(Milk Momentum Index)
- エスプレッソ:抽出後の圧力(CO2)の制御
- シグネチャー:甘さ、香り、質感、酸の要素別の制御
ミルクビバレッジ(競技の1杯目)
MMI(Milk Momentum Index)
濃縮したミルクは、凍結濃縮などの方法で、この業界で一般的になりました。しかし、Frederick Ruben選手は、「より濃いほうが常に良いわけではない」と考えています。コーヒーを助けることもあれば、そうでないこともあるからです。
そこでチームと開発したのが、MMI(Milk Momentum Index)という簡単な指標です。コーヒーが持つ、発酵とフレーバーの強度(エネルギー)に対して、適切なミルク濃度を選ぶことを、「制御」と捉えます。
ボードのイラストで示された例です。
- 発酵度の高いコーヒーに、通常のミルクを合わせると、コーヒー寄りで、重く、鋭くなります。
- 花のようなコーヒーに、非常に濃いミルクを合わせると、ミルキーになりすぎて、コーヒーの風味が隠れます。
濃度は、ブリックス(Brix)で測ります。通常の牛乳はおよそ10〜14ブリックスです。
ミルク
ジャッジには、ブリックス屈折計を覗いてもらい、約21ブリックスの濃度を確認してもらいました。作り方は、生乳を元の体積の50%まで凍結濃縮し、そこにラクトースフリーミルク10%を加えて、濃度を調整します。甘さを高めつつ、質感を整えます。1杯あたりミルク75ml、提供温度55℃です。
抽出レシピとフレーバー
抽出は、20g→23ml、91℃。コーヒーの甘さと質感を際立たせる設計です。フレーバーは、溶けたダークチョコレートアイスクリーム、ティラミスです。提供時は、エスプレッソスプーンで円を描くように5回混ぜてから飲んでもらい、スプーンは白いカップに戻します。
エスプレッソ(競技の2杯目)
コーヒーと生産者
高地のテロワールが生んだゲイシャの、クラシックなウォッシュドです。標高約2,000mのLerida Coffee Estate産と紹介されました。初めて味わったとき、高いフローラルさと複雑な酸味を見て、「世界の舞台に持ってこよう」と決めたそうです。
焙煎と抽出
焙煎:熱風式の焙煎機で、7分50秒。
抽出:フローラルさと複雑な酸味を際立たせるため、あえて短時間で抽出します。20g→40ml、約17秒。
抽出後の減圧:エスプレッソは、圧力でフレーバーをカップに運びますが、抽出直後の液体にはCO2が残り、フレーバーのクリアさに影響します。そこで抽出後、低圧の環境を作ってCO2を減らし、クリアさとフローラルさを高めます。Acaia Horizonsを使用。
「モメンタムは、力ではなく、いつ放し、いつ抑えるかを知ること」という説明でした。
フレーバーと提供
フレーバーは、オレンジブロッサム、ピーチ、ベルガモットです。酸は中〜高の活き活きしたもの、甘さは中程度、苦味は低く、ロウウェイトで繊細なテクスチャーです。余韻は、ベルガモットやジャスミンティーのような、柑橘とフローラルです。まずクレマを評価してもらい、5回往復して撹拌してから飲んでもらいます。
シグネチャービバレッジ
コンセプト
「エネルギーはコーヒーの中だけでなく、私たちの中にもある」という考えから、ジャッジに材料を1つずつピッチャーへ入れてもらう、参加型の演出にしました。ベースは、エスプレッソコースと同じコーヒー(ウォッシュドのゲイシャ)で、花と、ストーンフルーツの組み合わせです。4つの材料は、それぞれ1つの制御に対応します。
4つの制御
- 甘さの制御:デーツの浸漬液(20ml)
- デーツ50gと水100mlを、冷蔵庫で48時間置いたものです。
- デーツは、Frederick Ruben選手がコーヒーのキャリアを始めた場所、UAEのものです。
- 新しい甘さとして、パッションフルーツのニュアンスを作ります。
- 香りの制御:金木犀とゲイシャの花の芳香液
- 金木犀10gと、ゲイシャの花を100mlの常温水とともに、窒素圧をかけたサイフォンに入れて抽出します。
- エスプレッソコースで学んだ「圧力の制御」から着想し、花の香りを開かせて、オレンジブロッサムの方向へ強めます。
- 質感の制御:クラリファイドミルク(20ml)
- ミルクコースの、21ブリックスのミルクを、10mlのクエン酸溶液で清澄化したものです。
- より滑らかで、シルキーな質感になります。
- 酸の制御:スロークックしたピーチ(20ml)
- ピーチと水を各100g、砂糖50g、塩10gを、60℃で2時間かけて煮たものです。
- コーヒーのストーンフルーツの個性を再導入し、マンゴーのプロファイルを作ります。
仕上げと提供
ホモジナイザーで混ぜ、細かく統合しつつ、エアレーションを制御して、一貫した質感に整えます。ジャッジには、「Time」の合図までは飲まずに待ってもらいました。余韻は、スイートパッションフルーツです。カップは、クリアさと活き活きした酸を高めるために、特別に用意したものだそうです。
まとめ
ミルクの濃度を「高ければ良い」とせず、コーヒーに応じて最適化する指標(MMI)を示した点が、最大の特徴でした。焙煎、抽出、ミルク、シグネチャーを、「エネルギーの制御」という1つの軸で貫いています。締めでは、焙煎と同じく、いつエネルギーを足し、いつ抑えるかが大切で、人生も同じだと語りました。「始め、制御し、コーヒーと人生でクリアさとバランスにたどり着く」という言葉で終えています。
4位:Gabrel Tan選手(オーストラリア/Veneziano Coffee Roasters)
予選613.0点、準決勝505.0点、決勝526.5点でした。
テーマ:Recognition(人と産地の可能性を認める)
原点:10年前、18歳でオーストラリアに移住した Gabrel Tan選手は、バリスタとして働きたいという情熱があっても、その機会を得られませんでした。そこで出会ったのが、Kenという人物です。Kenは、本人も気づいていない可能性を認め、最初の仕事を与えました。
学んだこと:ホスピタリティ、コーヒー作りの精密さ、競技がもたらす機会。Gabrel Tan選手は、自分のキャリアは、コーヒーだけでなく、自分より先に自分の可能性を見出してくれた人たちによって形作られたと振り返ります。
3つの車輪:認めることを前に進める、3つの要素を挙げました。
- Opportunity(機会)
- Accountability(責任)
- Identity(独自性)
構成:今年訪れた、2つの産地の生産者を対比します。1人は、確立した生産者(パナマ)。もう1人は、自分の地域のために道を切り拓き、新しい可能性を作る生産者(インドネシア)です。
エスプレッソ
コーヒーと生産者
使用したのは、パナマのボケテ産、標高1,700mのウォッシュド・ゲイシャです。公式資料の生産者は、Finca Leridaです。
農園を運営するのは、María氏です。訪問時、棚に多くのトロフィーが並んでいたそうです。この農園は、2001年に、パナマの品評会で最初に優勝した農園だと、説明されました。
María氏は、2000年代初めに農園を引き継いだとき、伝統を受け継ぐだけでなく、築き続ける機会と捉えました。「確立した名前があっても、関連性が保証されるわけではない」ため、認められ続ける努力を続けています。
- インフラと、新しい精製方法への投資
- より高地での栽培
- 世界を巡って、コーヒーを広める活動
- 従業員の住居、インセンティブ、機会の提供(Accountabilityは、最高のコーヒーを作ることにとどまらない)
María氏は、無から始めたのではありません。すでに築かれたアイデンティティを見て、それを前へ運ぶことを選びました。
精製
チェリーを果肉除去し、洗浄してから、温度管理した部屋で28日間乾燥させます。ストーンフルーツの個性を高める工程です。
抽出レシピ
21g→45g、23秒。
フレーバーと提供
フレーバーは、オレンジ、黄桃、アールグレイです。完璧な飲用温度にするため、10回撹拌してから飲んでもらい、使用後のスプーンは青いカップに戻します。
ミルクビバレッジ
コーヒーと生産者
使用したのは、インドネシア・スメンド(Semendo)の、Finca Aliで栽培されたコーヒーです。公式資料の品種は、Kartika(カルティカ)で、プロセスは48時間の嫌気性ナチュラルです。標高は約1,700m。
生産者は、レイモンド氏です。Gabrel Tan選手は、彼が単独で、インドネシアのコーヒーに対する見方を変えたと語ります。レイモンド氏は、パナマのゲイシャのように、明確で力強く品質を伝えられつつ、それでいてインドネシアらしい、独自のアイデンティティを築こうとしています。まず品質向上のため、最高の生産者から学ぼうと、パナマを訪れました。そこで気づいたのは、すでに自分の知識も対等だということ、そして大切なのは、パナマを真似ることではなく、インドネシアにとって最良のアイデンティティを形作ることだ、ということでした。
スメンドの多様な山と微気候に機会を見出して、Finca Aliを始めました。この土地で育つ品種を見つけるため、数年かけて研究と試行錯誤を重ねています。スメンドは、インドネシア最大級のロブスタ産地です。レイモンド氏は、次世代の農家のための「設計図」を作る使命感を持ち、教育しながら、アラビカがより高い価格を得られることを証明しようとしています。単に違うコーヒーを育てるのではなく、より良い未来のために機会をつかむことだ、という説明でした。
Gabrel Tan選手は、「優れたコーヒーは、どこからでも生まれる」と気づき、世界の舞台に彼のコーヒーを載せることで、インドネシアのコーヒーが当然受けるべき世界的な認知を得る一助になればと語りました。
精製と焙煎
発酵:密閉したグレインプロの中で嫌気発酵させ、複雑さを高めます。ストロベリーのノートを生みます。
乾燥:発酵後、気候管理した暗室で、水分10%までゆっくり乾燥させます。長期の安定性と、カップの一貫性のためです。
焙煎:20日前に、高めの終了温度で焙煎しました。ボディを高めて、ミルクを突き抜けさせる狙いです。
抽出レシピ
21g→35g、24秒。
ミルク
フルクリームミルク90%に、凍結乾燥したオーツミルク10%を合わせます。甘さと質感を高める設計です。
フレーバー
ストロベリー、チョコレート、バタースコッチ
シグネチャービバレッジ
コンセプト
Kenへの敬意として、まず、レイモンド氏とMaría氏それぞれのコーヒーのダブルエスプレッソを、各1組ずつ(計4ショット)加えます。抽出は、2つのコースと同じレシピです。その「認めてもらった」機会がくれた、世界の産地を旅する特権が、材料の着想になりました。
材料1:麹発酵させたタマリロ(100g)【機会(Opportunity)】
タマリロ(ツリートマト)は、パナマのコーヒー農園で初めて出会った果実です。柑橘と熱帯果実の混ざった味で、パナマのエスプレッソとよく合ったそうです。
白麹と酵母を、タマリロと水の10に対して1の割合で加え、常温で5日間発酵させます。自然な糖と、熱帯果実のノートを増幅させる狙いです。María氏のコーヒーのストーンフルーツの個性が、ブラッドオレンジなどの新しいフレーバーに変わります。
材料2:カカオハスクとチェリーの浸漬水(100g)【責任(Accountability)】
インドネシア訪問時に、生産者から学んだ「責任」の姿です。自分のゴールだけでなく、コミュニティを見る視点です。持続可能な収入が大切で、カカオはそれを提供します。カカオは、より低い標高でも同じ条件で育ち、収穫期間が長いため、コーヒーの摘み手に、コーヒー収穫の合間も安定した仕事を作れます。
カカオハスクは複雑さと心地よい苦味を持ち、さらにフルーティさを高めるため、カカオハスクと凍結乾燥チェリー各20gを、水300gと一緒に、冷蔵庫で3日間浸します。インドネシアのコーヒーのストロベリーのノートが、ラズベリーなどに変わります。
仕上げ
2つの材料を合わせて清澄化し、60psiで強制炭酸化して、発泡感のある質感にします。提供温度は10℃で、発泡感を高めます。ジャッジには、「Time」の合図の後、何口でも好きなだけ飲んでもらいました。
まとめ
エスプレッソ(確立した産地の責任)、ミルク(新しい産地の可能性)、シグネチャー(両者の統合)で、「認めること」の3つの車輪を表現した構成でした。パナマとインドネシアという、評価の定まった産地と、これから評価される産地を、同じ舞台に並べて、先入観を問い直しました。
締めでは、バリスタ、生産者、審査員のすべてが、成功するために一定の「認められること」を必要とする。Kenの認識が自分のキャリアを形作ったように、他者を認めることが、素晴らしいことを成し遂げるための勢いを生むと語りました。
5位:Jane Kawinnart選手(タイ/Fika & Co.)
予選643.0点、準決勝556.5点、決勝521.0点でした。予選の得点は、この表に載せた選手の中で最も高い数値です。
テーマ:ゲームになぞらえた独自のプレースタイル
出発点:子どもの頃から、デジタルと対面を問わず、あらゆるゲームが好きでした。ゲームがリアルな生活に応用できるとは思っていなかったそうですが、WBCに参加して、WBCにはゲームと似た仕組みがあると気づきました。複数のステージ、採点、他のプレイヤー、勝つための多様な方法です。
気づき:ゲームで詰まったとき、他のプレイヤーの攻略を見るように、大会の初期は、過去のチャンピオンを見て、その道をたどりました。しかし、このゲームをクリアして自分の記録を作るには、ただ従うだけではだめで、自分のプレースタイルを作る必要があると気づきました。それは、バリスタとして成長するだけでなく、自分らしくいられることにもつながります。
演出:ジャッジを、ゲームのプレイヤー1〜4に見立てました。目の前には、8つのチェックポイントを持つゲームマップがあり、飛行機やキャラクターの駒をジャッジに動かしてもらいながら進みます。チェックポイントは、道のりの安全装置のような存在です。
エスプレッソ
舞台とキャラクター(チェックポイント1)
舞台はパナマ、キャラクターは、Kai Janson氏のゲイシャです。バランスの良い甘さと、丸いボディがあり、さまざまなミッションに応じて調整しやすいからです。
このキャラクターを使うのは初めてではありません。2023年の初めてのWBCで、同じコーヒーを使った選手が優勝しました。その歩みを追って、2024年の国内大会で同じコーヒーを選びましたが、勝てませんでした。そこから、この豆を、もっと理解しなければならないと悟りました。これは、ゲームで「同じキャラクターを選びつつ、より強くする」経験値を積むことに当たります。
農園訪問(チェックポイント2)
Kai氏のJanson Estateを訪れ、同じコーヒーの異なるバージョンから選びました。キャラクターへの「改造」に当たります。Jane選手のプレースタイルは、上品なフローラルと、繊細なエスプレッソを好む、守備型です。そのため、エスプレッソにはハニープロセスを選びました。
「グリーンチップ」のゲイシャを使い、全果発酵の際にピーチ系の酵母を加えて、花と柑橘の個性を高めています。果肉を除去したあと、ミューシレージを残して乾燥し、甘さを引き出しました。香りを守るため、ハロゲンと熱風を組み合わせた焙煎機で焙煎します。
抽出レシピ
21g→48g。シングルドーズ式のネイキッドグラインダーで挽きます。抽出収率が高まり、カップのフレーバーのクリアさが際立ちます。
フレーバーと提供
フレーバーは、オレンジ、アプリコット、ハチミツ、ジャスミンティーで、オレンジとホワイトティーのフィニッシュです。酸、甘さは中程度、苦味は中〜低。ボディは中〜低で、シルキーでジューシーなテクスチャー、上質なお茶のようなフィニッシュです。ジャッジには、クレマだけ確認してもらい、味わうのは待ってもらいました。ピンクのカップにあるスプーンで、前後に5回撹拌してから飲んでもらいます。
ミルクビバレッジ
コーヒー(チェックポイント3)
ミルクコースの準備中、守備型のプレースタイルでは、繊細すぎて通用しないことに気づきました。そこで、より強いフレーバーを届けられる、攻撃型のスタイルを学ぶ必要がありました。選んだのは、ゲイシャのナチュラルです。ミルクに対抗できる強いフレーバーを持ちます。
プロセス:嫌気性発酵のあと、暗室でナチュラルとして乾燥し、より熱帯果実のキャラクターを引き出します。
焙煎:ボディと甘さを増すため、ドラム式の焙煎機で焙煎しました。
グラインダー:フレーバーの成分のバランスを取り、甘さを際立たせるため、レブゼロに変更しています。
抽出:20g→38gで、フレーバーを強めます。
ミルク(チェックポイント4:他のプレイヤーから適応する)
他人の例は「唯一の道」ではなく、「着想」として使うという姿勢です。まず、過去のチャンピオンの技法(ミルクを先にブレンドして、スチームで濃縮する)を取り入れました。
しかし、何度も試すうちに、そのミルクは別のコーヒー向けに設計されていると気づきました。そこで少し修正し、ラクトースフリーミルクだけを、65℃で3時間加熱して、水分を35%蒸発させました。そこに、低脂肪乳40%をブレンドして、パイナップルのようなコーヒーの香りを際立たせます。
2つのミルクを混ぜるのは、スチームの直前です。両方のミルクの分子が完全に均質化するのを防げるため、コーヒーのフレーバーをより際立たせられます。コーヒーとミルクの比率は1:3です。
フレーバーと提供
フレーバーは、マンゴーアイス、アプリコットキャンディ、ホワイトチョコレートです。ジャッジには、視覚だけを評価してもらい、味わうのは待ってもらいました。
シグネチャービバレッジ
コンセプト(チェックポイント5)
ここまでを経て、より良いプレイヤーになるには、守備型と攻撃型の両方に適応する必要があると気づきました。そのため、シグネチャーでは、ハニーとナチュラルの2つのコーヒーを、これまでのコースと同じレシピで抽出し、一緒に使います。合わせると、より複雑なフローラルかつフルーティな土台ができます。
能力を強化する(チェックポイント6)
- 守備側の強化:ハニー・アールグレイティー(90g)
- アールグレイ2gを、95℃のお湯180gで4分抽出します。
- ティーとハチミツを、「3:2:1」の比率で合わせます。
- ハチミツが甘さとボディを足し、アールグレイの柑橘のノートが、コーヒーと他の材料をつなぎます。リンゴと花のフレーバーが加わります。
- 攻撃側の強化:清澄パッションフルーツとタイバジル(170g)
- パッションフルーツジュース200g、ミルク100g、バジルの葉6gをブレンドして、濾したものです。
- パッションフルーツの活き活きした酸と、タイバジルの独特な甘い香りがコーヒーと合わさり、グリーングアバのフレーバーを作ります。
秘密のアイテム(チェックポイント7)
ボックスに入れた材料を、ジャッジに開けて渡してもらいました。「バフ(強化)」のように、ダメージを与えるのではなく、強くするアイテムとして、魚醤2滴を加えます。うま味を足し、甘さと酸のバランスを整えます。すべての材料をCO2で炭酸化し、フレーバーの香りを持ち上げます。提供温度は、爽快感のある、やや冷たいものです。
飲み方とフレーバー
1口目は、提供されたそのまま。タラゴンとグリーングアバのフレーバーです。2口目の前に、よく混ざるまで撹拌します。リンゴ、花、マスカットグレープのフィニッシュで、発泡感があります。少なくとも2口は飲んでほしい、という指示でした。
まとめ
個人のゲーム体験を、審査員が参加する競技設計に転換した構成でした。エスプレッソは守備型、ミルクは攻撃型、シグネチャーで両者を統合しています。過去の優勝者のコーヒーを使って結果が出なかった経験から、「同じキャラクターを、より理解して強くする」という方向に切り替えた点は、競技者のキャリアの教訓としても読めます。
締めでは、コーヒーの外で楽しんでいることを、自分のスタイルとして持ち込んでほしいと呼びかけました。予選で最高得点を出しながら、決勝は5位という結果でした。
6位:Jill Hoff選手(カナダ/Monogram Coffee)
予選614.5点、準決勝542.5点、決勝486.5点でした。
テーマ:DNA(品種の個性と発見)
導入:人にはそれぞれ固有の遺伝子の並びがあり、その一部は、鏡を見れば分かります。しかし、重要な部分は隠れていて、時間、経験、情熱によって目覚めるのを待っています。コーヒーにも同じようにDNAがあり、葉の形やチェリーの色は見えますが、最も重要な部分は、種の中に刻まれていて、フレーバーを形作ります。
3つの軸:コーヒーのDNAを、次の3つで体験してもらう構成です。
- Discovery(発見):エスプレッソ
- Narrative(物語):ミルクビバレッジ
- Adventure(冒険):シグネチャー
2つのコーヒー:新しく発見された品種(チャキラ)と、再び現れてきた種(リベリカ)という、明確に異なる遺伝的プロファイルを持つ2種類を提供します。
エスプレッソ
自身の発見とゲイシャ
人間の経験の一部は、自己発見です。Jill Hoff選手にとって、自分のDNAの一部は音楽で、歌手であることでした。しかしそれは、鏡を見るだけでは分からず、発見に時間がかかった部分です。コーヒーも同じで、コーヒーの世界を歩み始めたことで、自分でも知らなかった自分に出会ったそうです。
ゲイシャを初めて味わったことが、転換点でした。この品種は違い、私たちのコーヒーへの考え方を根本から変えました。それが、他の品種、さらには他の種を探る好奇心につながりました。
2つのコーヒーのブレンド
- チャキラ(Chakira):90%
- パナマ・ボケテ、Las Brujas Estateの、Koyner家が発見した新しい品種です。
- 品種園で自生していたものが印象的で、DNA検査をしたところ、エチオピアの在来種のDNAを持つことが分かりました。ストーンフルーツと花の、表現豊かなプロファイルと、なめらかな質感を持ちます。
- プロセスは、ナチュラルです。
- リベリカ(Liberica):10%
- インドネシア・中部ジャワの、J B CoffeesのReza Nurullah氏が生産し、酵母発酵した嫌気性ナチュラルです。標高はわずか800mです。
- アラビカとは染色体数が異なり、遺伝的に大きく違います。明確に甘く、揮発性の香気成分が多く、本来は、ブラウンスパイスや熱帯果実のノートを持ちます。
- 精製を通じて、それらのブラウンスパイスが、果実を前面に出すフレーバープロファイルに変わりました。低標高のコーヒーへの期待を覆すコーヒーだと語りました。
器具:Better Vessel
クレマを、エスプレッソ本体から分離するための器具です。クレマが引き起こしうる余計な苦味を減らします。この器具を使うと、コーヒーのフレーバーが最もクリアになることが分かり、採用しました。ジャッジには、カップの上にBetter Vesselを載せて、エスプレッソをカップに移してもらい、その後、15回撹拌して飲んでもらいました。
フレーバーと提供
フレーバーはグレープ、ピーチ、オレンジブロッサムで、後味にはフルーツパンチのような、フルーツの集まりを感じます。ミディアムウェイトで、スムース、ベルベットのようなフィニッシュです。ジャッジには、クレマだけ評価してもらい、味わうのは待ってもらいました。
ミルクビバレッジ
コーヒーと生産者
使用したのは、リベリカ100%です。ミルクとの組み合わせでは、このコーヒーの個性を提示します。リベリカは、世界の生産量の2%未満の希少種ですが、Reza Nurullah氏のような生産者による実験的な発酵が、この種のフレーバーを再定義しています。
病気への自然な耐性と、より暖かい気候でも育つ能力を持つため、気候変動に直面するコーヒー産業にとって、重要な種になる可能性があると語りました。リベリカの再評価は、「回復力(レジリエンス)」の物語です。それは持続可能性だけでなく、フレーバーの幅を広げ、バリスタがコーヒーの多様性を尊重する形で、新しい物語を語る助けになります。
ミルク
ラクトースフリーミルク85%に、凍結乾燥したココナッツミルク15%を合わせます。バランスを取りつつ、クリーミーな質感を作り、リベリカ本来の甘さを高めます。
フレーバーと提供
フレーバーは、バタースコッチ、ラムレーズン、チョコレートミルクシェイク、ダークチェリーです。後味に、バタースコッチとラムレーズンが残ります。このコーヒーは、遺伝子だけでなく、その物語にも価値があり、世界の舞台にふさわしい物語だと、Jill Hoff選手は語りました。
シグネチャービバレッジ
コンセプト
今、多くのカフェが、メニューにコーヒーのシグネチャードリンクを載せ、コーヒーは、馴染みのある飲み方を越えて、より創造的で、体験的なものになっています。Jill Hoff選手は、Monogramの役割の一部として、メニューを通じてこうしたトレンドを探っています。その体験を、この決勝の舞台に持ち込みました。
ベースは、チャキラの冷却エスプレッソ4ショットです。リベリカのDNA(スパイス、甘さ、熱帯果実)に着想を得た素材を足して、チャキラとリベリカを、新しい形でもう一度つなぎます。
3つの材料
- バニラ・スターアニスのシンプルシロップ(20g)
- バニラビーンズ1本、スターアニス10g、砂糖と水を各100gで、50℃で3時間、スーヴィードします。
- リベリカで典型的な、スパイスのノートを再導入し、コーヒーと合わせて、マルドサイダー(温かいスパイス入りサイダー)のようなノートが生まれます。
- オレンジ・オレオサッカラム(7g)
- オレンジピールと白砂糖を同量ずつ合わせ、5日間マセレーションしたものです。
- リベリカの高い甘さを再現し、柑橘のオイルが、コーヒーの花のノートと合わさって、ベルガモットのノートを作ります。
- グアバ・ミルクパンチ(100g)
- グアバネクター400g、全乳200g、レモン果汁60gを合わせ、紙フィルターで夜通し2回濾したものです。
- チャキラのストーンフルーツのノートと合わさって、マンゴーと、シャンパンのようなスパークリングホワイトワインのノートを作ります。
仕上げと提供
ドリンクを冷やして、CO2を充填し、スパークリングの質感を作ります。ジャッジには、「Time」の合図まで待ってもらいました。フレーバーは、シャンパン、マンゴー、マルドサイダーで、スパークリングの質感です。
まとめ
品種と種の「DNA」という視点で、発見、物語、冒険の3つを、3つのドリンクに結びつけた構成でした。ゲイシャではなく、新品種のチャキラと、希少種のリベリカを主役にした点が、他の決勝進出者との大きな違いです。リベリカをミルクの主役にし、シグネチャーでは、スパイス、柑橘、ミルクパンチでその個性を再構成しました。
締めでは、ジャッジ1人ひとりにもそれぞれの物語があり、私たちのDNAには、すべてをつなぐ共通の糸がある、それがコーヒーだと語りました。
日本代表:本間 啓介選手(サザコーヒー/準決勝8位)
予選533.5点(15位)、準決勝478.5点(8位)で、惜しくも決勝には進出できませんでした。以下は準決勝のプレゼンテーションの内容です。競技順は、ミルク、エスプレッソ、シグネチャーの順でした。
テーマ:道は歩くことでできる
構成:世界各地から来たバリスタの道は、それぞれ違いますが、すべてWBCの舞台へ続いています。自分たちの道をつなげることで、スペシャルティコーヒーを、より多くの人に伝えられると考えました。
生産者の道:本間選手が今歩いている道、生産者の道を、聴き手の道とつなげます。
原点:15年前、美しいエチオピアのナチュラルのコーヒーで始まりました。ストロベリーミルクのような味のカプチーノで、その驚きが、バリスタになり、スペシャルティコーヒーの道に入るきっかけになったそうです。
ミルクビバレッジ(競技の1杯目)
原点の再現
15年前のストロベリーミルクのようなカプチーノ、自分のコーヒー体験を再現したいと考えて、エチオピアのコーヒーを選びました。
生産者
使用したのは、エチオピア・シダマの、Ashenafi氏のコーヒーです。標高1,800mの遠隔地で、在来品種の組み合わせで栽培されています。嫌気性発酵のコーヒーです。初めて農園を訪ねたのは10年前でした。農園は小さく、空港から24時間かかり、道端で眠る必要もありました。それでも、旅の価値があったのは、これまで味わった中で最高のエチオピアのコーヒーの1つだったからです。
数年で、2人のつながりは強くなりました。再訪したときは、空港から5時間で着きました。多くの人が彼の世界クラスのコーヒーを発見したため、道が整備されたからです。
抽出レシピとミルク
抽出は、21g→40gです。ラズベリーのフレーバーに焦点を当てます。ミルクは、乳脂肪分4%のものを使用し、エスプレッソとミルクのバランスを整えます。
フレーバー
ラズベリー、チョコレート。なめらかなテクスチャーで、ハチミツのフィニッシュです。
エスプレッソ(競技の2杯目)
パナマとゲイシャ
本間選手は、パナマが大好きで、特別なコーヒーを探して、何度も訪れてきました。パナマのゲイシャは、コーヒーをあまり飲まない友人にも、業界の長いコーヒー関係者にも、同じ反応を引き出します。「どうしてコーヒーがこんな味になるのか」と。パナマは、コーヒーの可能性を示すことで、多くの人と道をつなぐ助けになりました。しかし、パナマのゲイシャは簡単ではなく、焙煎と抽出に、忍耐と調整が必要です。
生産者
10年以上の付き合いになる生産者が、Kai Janson氏です。出会った瞬間から、共に取り組んできました。パナマ・ボルカン地区のJanson Coffee Farmは、世界クラスのコーヒーを生産してきた、長く豊かな歴史を持ちます。特徴的なのは、Kai氏自身が、バリスタでもあり、生産者でもあることです。
2018年から、本間選手や世界のバリスタと協働し、そのフィードバックを受けて、毎年ロットを改善してきました。その開放性が、多くのコーヒー関係者が彼の仕事に関わるきっかけとなり、パナマのゲイシャを世界へ広めています。
コーヒーと抽出
ウォッシュドです。3週間前に、Probatの5kg機で焙煎し、DTRは約18%、質感と甘さに焦点を当てます。抽出は、20g→45gで、花と柑橘のノートに焦点を当てます。
フレーバーは、オレンジ、ハチミツ、オレンジブロッサムです。ミディアムボディで、シルキーなテクスチャー、穏やかな酸のフィニッシュです。ジャッジには、クレマを先に確認してもらい、撹拌せず、そのまま飲んでもらいました。カップは、花の香りを保ち、柑橘のフレーバーを捉えやすい形状だそうです。
シグネチャービバレッジ
コンセプト
生産者の道が、コーヒーを通じて私たちとつながる。そのつながりを、さらに強くするため、「道をつなぐ橋」としてシグネチャーを作りました。ベースは、エチオピアのエスプレッソ2ショットと、パナマのゲイシャのエスプレッソ2ショットです。抽出は、各コースと同じレシピで、Hyper Chillerで冷やします。4つの材料は、道のストーリーに合わせて選んでいます。
4つの材料
- エチオピアのフォレストハニーシロップ(50g):出発点
- フォレストハニーと水を1:1で合わせたものです。クリーンな甘さを作ります。
- パナマのパッションフルーツジュース(60g):パナマ(Janson Coffee Farm)の恵み
- ストーンフルーツのフレーバーを作ります。
- ジャスミンティー(48g):パナマ・ゲイシャのフローラルなノートに合わせる素材
- 1:10の比率で、1分間抽出したものです。フローラルノートの余韻を足します。
- 抹茶(0.1g):自分の国、日本
- 緑のうま味と質感を加えます。日本の茶道の技法で混ぜ合わせ、「伝統的な方法が、すべてをつなぐ」と語りました。
仕上げ
金箔を飾り、「過去の旅路を照らす光」として表現しました。
フレーバー
ピーチ、グレープフルーツ。シルキーなテクスチャーです。
まとめ
エチオピア(原点)、パナマ(成長の道)、日本(自分の国)の3か国の人、産地、技術を、1杯の橋にした構成でした。茶道の所作を取り入れた演出は、日本代表らしい表現です。
締めでは、アシェナフィ氏とカイ氏のような生産者が、個々の旅路が、いかにこの業界のコミュニティを育てるかを示してくれると語りました。道を伸ばしていくために、私たちコーヒー専門家は、互いにだけでなく、すべての人へ、それぞれの道をつなげていく必要があると述べました。
総括:2026年のWBCが示したもの
決勝6名と日本代表のプレゼンテーションを通して、latte mapが見たことを、共通点としてまとめます。ここに書くのは、採点基準や審査員の評価ではなく、私たちの見解です。
ミルクビバレッジを「設計」する
決勝6名全員が、ミルクの濃度や組成を調整していました。
- Pan Wei選手:牛乳の水分を約30%除去し、ピスタチオミルク50%を合わせました。
- Shing Win選手:フレッシュミルク95%に、凍結乾燥ミルクパウダー5%を加えました。
- Frederick Ruben選手:牛乳を50%まで凍結濃縮し、ラクトースフリー10%で約21ブリックスに調整しました。
- Gabrel Tan選手:フルクリームミルク90%に、凍結乾燥オーツミルク10%を合わせました。
- Jane Kawinnart選手:ラクトースフリーミルクを煮詰めて水分を35%除去し、低脂肪乳40%を、スチーム直前にブレンドしました。
- Jill Hoff選手:ラクトースフリー85%に、凍結乾燥ココナッツミルク15%を合わせました。
濃縮、凍結乾燥、ブレンドと手法は違いますが、ミルクを脇役ではなく、設計する素材として扱う流れは共通しています。さらに、Shing Win選手は豆の水分、Jane選手はミルクを混ぜるタイミングまで調整しており、ミルク側とコーヒー側の両方から、味の設計を詰めていることが分かります。
産地の広がり:パナマのゲイシャとその先
今回の7名全員が、パナマのコーヒーを使用しました。ウォッシュドのゲイシャが、決勝6名のうち4名のエスプレッソに使われています。
一方で、インドネシアのコーヒー(Gabrel Tan選手のKartika、Jill Hoff選手のLiberica)が、決勝の2名のミルクに登場しました。コロンビアのゲイシャ(Pan Wei選手)や、エチオピア(本間選手)も加わります。Gabrel Tan選手の「認めること」、Jill Hoff選手の「DNA」というテーマは、ゲイシャが評価される一方で、その外側にある可能性を示そうとする試みでした。
生産者の物語を語る
多くの選手が、生産者の背景や、その選択を、プレゼンテーションの軸にしました。
- Pan Wei選手:気候変動の中で選択した、生産者の家族の物語。
- Gabrel Tan選手:確立した農園(María氏)と、新しい産地(レイモンド氏)。
- Jill Hoff選手:Reza Nurullah氏による、リベリカの再評価。
- 本間選手:10年以上の付き合いがある、Ashenafi氏とKai Janson氏。
気候変動に触れたのは、Pan Wei選手(高地への移動、精製の革新)と、Jill Hoff選手(リベリカの耐病性と耐暑性)でした。
炭酸と冷却、そして審査員の参加
シグネチャーで炭酸を使ったのは、Pan Wei選手(スパークリングウォーター)、Gabrel Tan選手(60psiで炭酸化)、Jane Kawinnart選手、Jill Hoff選手(CO2)の4名です。Shing Win選手は液体窒素で氷の結晶を作り、本間選手はHyper Chillerで冷却しました。
審査員に操作や体験を求める演出も目立ちました。Pan Wei選手(振動の体験、グラスの地球)、Shing Win選手(パンを割る)、Frederick Ruben選手(材料を入れる)、Jane Kawinnart選手(ゲームの駒を動かす)です。
副産物や通常は使わない素材の活用
- Pan Wei選手:コーヒーチェリーの皮、モスト発酵液。
- Gabrel Tan選手:カカオハスク。
- Jill Hoff選手:オレンジピール(オレオサッカラム)。
生産の工程で出る素材や、これまで使われてこなかった素材に、価値を見出す動きです。
結びに
決勝を制したのは、「すべてのコーヒーは家族から生まれる」と語ったPan Wei選手でした。抽出レシピと審査員を巻き込む演出、手法は一人ひとり違います。それでも全員のプレゼンテーションには、生産者の物語を、いかに1杯に結びつけるかという共通の問いがありました。
そして来年4月、WBCが20年ぶりに東京へやってきます。日本から猿田彦珈琲の伊藤 大貴選手の出場が決定。伊藤選手は、JBC2026決勝で、高校生との出会いから「次の世代が目指したいと思える職業にすること」を使命に掲げ、718点で優勝しました。次世代への責任を語ったPan Wei選手の問いかけと、重なる部分も多いように感じます。
今回のパナマで見られた、ミルクの設計、発酵の先を描くシグネチャー、審査員とつくる体験。こうした世界の試みを、伊藤選手はどのように受け止めているのでしょうか。ホームで迎える世界の舞台で、どんな1杯が生まれるのか楽しみでなりません。latte mapも引き続き、競技会の最前線をウォッチしていきたいと思います。

